彼の人 ページ3
芥川龍之介side
復讐に身を焦がしていた僕の目の前で仇をいとも簡単に拘束し、条件付きで仇討ちを完遂させてくれた。さらには妹と共に生きる場所も与えてくれた僕の神様。
名を、堀辰雄という。
あの人は言った、『俺の部下になれ』と。
未だその約束が果たされずにいるのは太宰さんの言う通り僕が未熟だからなのだろう。
太宰さんの下につかされたことに不満はない。あの人が僕に期待をしているという事の証明だから。
それがどれだけ過酷なものであろうともあの人の為ならば我慢できた。痛くても、苦しくても、惨めでも、どんなことだろうと。
捕虜の尋問が僕の担当になった時、チャンスだと思った。ここで情報を確実に掴み、首領に伝えることが出来れば大手柄になるだろう。
それはきっといつも
あの人の部下になれるだろうか。褒めてもらえるだろうか。
然し、現実は無常だ。淡い幻想など一瞬で砕かれる。僕は殺してしまった。思わぬ抵抗を示したという免罪符も太宰さん相手には聞きもしない。
太宰さんに厳しくしつけられ、堀さんに失望した顔を向けて欲しくなくてじっと俯く。すぐ近くから優しい声がした。
手足をもぐ、如何してそんな簡単なこと思いつかなかったんだろう。
まだまだ部下になれそうもない、その一言が僕の心に大きくのしかかった。
僕は一介の構成員にも遠く及ばないと、堀さんの前で言われてしまう。酷く、屈辱的だ。
手に伝わる、石畳の冷たさまでもが僕を嘲笑っているかのように思える。
大嫌いだ。あの人の期待に添えない自分が、大嫌いだ。
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ツッキー本体は眼鏡(プロフ) - 何度見ても面白い作品です。とても続きが気になります。 (2020年9月24日 11時) (レス) id: ada14fc3d5 (このIDを非表示/違反報告)
ニコ - 面白かったです。1年後を楽しみにしてます。 (2020年4月8日 21時) (レス) id: 40dba85962 (このIDを非表示/違反報告)
猫ずきん(プロフ) - この作品本当に好きです!更新ありがとうございます!!次も気長に待ちます!! (2020年3月16日 19時) (レス) id: 843a33d8b4 (このIDを非表示/違反報告)
ツッキー本体は眼鏡(プロフ) - 続き待ってました!嬉しい! (2019年7月19日 0時) (レス) id: ada14fc3d5 (このIDを非表示/違反報告)
伊月(プロフ) - ものすごく面白いです!!続きが待ち遠しい…(`・ω・´) (2019年6月10日 20時) (レス) id: 97ec670de3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夜幸 | 作成日時:2019年2月16日 20時