【ポケモンUSUM】Close to you【グラジオ】 (ページ26)

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Phase.25 ページ26

「さよなら」とだけ言付けられた手紙があたしのもとに届いた。

　二人分の足音が廊下を埋めた。ばたばたと走ってくるその音に、看護師でないことを悟る。それはきっとハウとリーリエだ、と慌てて涙をぬぐった。二人にこんな顔を見せるわけにはいかない。あんなに軽快な足音なんだから、きっとハウがチャンピオンになった報告なのだろう。分かっている、彼はあんなにも強かったのだから。

　形ばかりのノックのあとに、バンと音を立ててドアが開かれた。頬を上気させたリーリエが、ハウの手を引いてきたようで、ハウの顔は頬まで真っ赤になっていた。可愛いな、と思うのもつかの間、息を軽く整えたリーリエが、ぱっと顔をあげて言う。

「ねえさま！ハウさん、チャンピオンになったんですよ！！」

「リーリエー、それおれのセリフーー！！！」

　騒がしいな、と思って笑った。
　同時に、堪えきれずに涙が零れる。
　ぱっと表情をこわばらせた二人に、慌てて涙をぬぐった。今なら、感動の涙として誤魔化せないだろうか───誤魔化せないだろうな、と自嘲しながら、それでもなんとか笑顔を見せた。

「そっか。おめでとう、ハウ。リーリエも」

「………お姉さん」

「……………ねえさま？」

「ハウ、強いもんね。来てくれて嬉しいよ」

「ねえさま？どうして、泣いているんです……？」

　やだなぁ、感動したんだよ、と形ばかり誤魔化した。後ろ手に握りつぶされた手紙が元凶だなんて悟らせたくはない。なんだかんだ敏いハウにはばれてしまうかもしれないが、と思ってハウに視線をやると、思った通り暗い顔をしていた。

「ごめんね、いきなり泣いちゃって……ほんとにおめでとう、ハウ」

「ううん、ありがとー……。お姉さんも、元気になったらバトルしようねー！こんどこそ！」

「あはは、初代チャンピオンさまとお手合わせ願えるなんて光栄です。ぜひ」

　おちゃらけた顔でハウに微笑めば、一瞬の悲し気な表情を挟んでハウも笑った。リーリエは、それを見てほっとしたように息をついた。
　ハウが、ぱっと踵を返してリーリエにいった。

「お姉さん、疲れてるみたいだから。今日は帰るねー」

「えっ？ハウさ、」

「行こ、リーリエ！お姉さん、またねー！」

「あっ、待ってくださいハウさん！ねえさま、また！」

　ハウの小さな心遣いに、苦笑いで手を振った。