【ポケモンUSUM】Close to you【グラジオ】 (ページ21)

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phase.20 ページ21

Aがどうしてここにいる、なにが、どうしてこうなった？さっきのポケモンは何者で、どうして地面にウルトラホールが開いていて、どうしてAが、吸い込まれている？駄目だ、思考が全くまとまらない！
　グラジオの声に反応して、その場に残った全員がグラジオを振り向いた。彼等の顔は全て、絶望に支配されている。

「……A、」

「にいさま…………」

　Aの名前を呼んで、帰ってこない返事に、Aが今ここに存在しないという実感がじわじわと背中を這い昇る。同時、かっと頭に血がのぼるのがわかった。Aの様子からして、あれは戦ったあとだ。
　……どうして、たたかわせた。この場の全員、いや代表を除く全員が、Aのことは知っていたのに！守れなかった悔しさと、その理不尽な怒りは、妹でも母親でも雇い主でもないハウへと収束した。間違いなく、この場で一番の力を誇る彼に。

「…………おい、ハウ」

「……………………なーに」

　一度グラジオを振り向いたきり、こちらと目を合わせようとしないハウに、さらに苛立ちが募る。大人げないことなのは、グラジオもよくわかっていた。彼を攻めたって仕方ないのくらい、分かっている。それでも。

「……どうして、Aを戦わせた」

「…………お姉さんが、戦いはじめたからー。おれも、リーリエも、怖かったから……」

「あいつなんかより、お前の方が強いだろう！あいつの体質も知ってるだろ！」

「まってください、にいさま、ハウさんは……」

　黙ったきり返事をしなくなったハウに、グラジオが業を煮やした。リーリエの声なんて頭に届きやしなかった。

「おい、聞いてるのか！！」

「にいさま、やめて！」

　とうとうリーリエが、震える足で立ち上がってグラジオとハウの間に入った。そのタイミングで、ハウがぱっとふりむいた。

「…………おれだって！」

　涙に濡れた眼に、だれもが一瞬戸惑った。あの、ハウが。……泣いている。
　その瞬間、グラジオははっと我にかえった。ハウは尚も続ける。

「おれだって、お姉さんのことも、ほしぐもちゃんのことも、グズマさんにルザミーネさんだって、ネクロズマだって、リーリエだって！！全部守りたかった！！！」

　ぼろぼろと泣くハウに、グラジオが小さく謝罪をこぼす。ハウはごしごしと腕で涙を拭っていた。

　それぞれが失ったものが、大きすぎた。