【ポケモンUSUM】Close to you【グラジオ】 (ページ20)

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phase.19 ページ20

グラジオ視点

　どうしてだ。どうして、居ない。
　財団で早急に片付けなければいけない仕事は片付けた。ずいぶん遅くなってしまったからと、わざわざビッケにライドギアを借りてまで飛んで帰ってきたのだ。
　空いていると思った鍵は、閉まっていた。不審に思いながらも鍵をあけて部屋にはいると、そこはもぬけの殻。……モンスターボールも、荷物も、ない。まさかと思って机に走りよれば、乱雑な走り書きがそこにはあった。

「"遅すぎるから、探しにいくね、心配しないで。グラジオは、過保護すぎだよ。とりあえず、ウラウラのエーテルハウスに行ってきます"…………あの、馬鹿！！」

　文章が苦手なAにしては頑張った方だろう。けれど今はそんなことどうだっていい。小さく舌打ちをすると、部屋を飛び出して鍵をかけ、リザードン呼び出した。取り敢えずウラウラへ、とそこまで考えて気がつく。
　エーテルハウスで首尾よくアセロラに会えたとしたらどうするだろう。エーテルパラダイスへ向かうか、いやそれならビッケから連絡が来るはずだ。ならばもうひとつの可能性として、

「祭壇か」

　一か八かの賭けだ。歯噛みしながら、リザードンに日輪の祭壇へいくようにと指示をした。

◇◇◇

近寄った段階で異変は明らかだった。リザードンに無理をいって階段に下ろしてもらう。よく見えなかったが、ハウのポケモンがいたから彼処に彼らがいるのは確かだ。尋常じゃない雰囲気を感じて、俺は走った。
あそこにAがいてもいなくてもきっと、緊急事態に変わりはない。なんなら、エーテルパラダイスでのんびり俺を待っていてほしいとさえ思う、其ほど尋常じゃない雰囲気だった。

　無駄に長い階段をかけ上がる。最初に見えたのは、グズマの背中だった。あそこにグズマがいるということは、母さんも。じゃああの黒い物体はまさか、ネクロズマか。
少しの期待と大きな不安を抱えながらグズマの横まで全力で走りきり、顔をあげた。

　そこで見たのは満身創痍のハウと、ハウのポケモンたち。へたりこんで涙を流すリーリエ、目を見開いたグズマに、悔しげで悲しげな顔の母さん。ネクロズマのような、ソルガレオのようなポケモンに、地面に開かれたウルトラホール。
そして、

「お姉さん！！！」

「ねえ、さま」

　ルカリオに支えられていたAが、消えていくネクロズマを追って無理矢理走り出し、ウルトラホールへと吸い込まれていく姿。

「A！！」