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『……勝った』
勝利して春高へと駒を進められたことを喜ぶチームメイトたち、泣いたり笑ったり、抱き合ったり。その喜び方は様々だった。
あかね「え！Aちゃん！？！」
私はというと、力が抜けてへなへなと床に座り込む。なんと情けないんだろうか
『へへ、何か安心したら力入んなくて』
あかね「Aちゃん今日受験だったもんね！お疲れさま！！」
眩しいぐらいの笑顔を向けてくれた、どうやら虎からその話を聞いたらしい。
あかね「あ！みんな外出るみたいだよ！！Aちゃんも迎えに行っておいでよ！！」
『う、うんっ、ありがとう…！』
あかねちゃんとアリサちゃん、そしてスタンドの部員たちに見送られて私は1階へと降りる。
わいわいと話しながら出てくる部員の姿を見て安堵と同時に、胸が締め付けられるような苦しさも溢れてきた。
黒尾「お、狼谷じゃん。いつから見てた？」
『戸美戦の、2セット目途中から』
海「梟谷に勝って早々に春高決めたかったんだけどね」
『うん』
黒尾「コイツ置いてくから、まぁ話すこともあるでしょ」
夜久「は？おい！」
海「ミーティングまで時間あるから、それまでに戻ってきてくれたらいいよ」
ごゆっくり、とか言いながら2人は夜久を肩から下ろした。
夜久「あ、えっと……」
夜久は片足を引きずっていた。その姿を見慣れなくて、処置はしたから大丈夫とか呑気なことを言う夜久に、気持ちが抑えきれなくなった。
夜久「へ！？」
孤爪「わ」
灰羽「Aさん、やっぱ夜久さんのこと好きですよね」
孤爪「リエーフうるさい。」
周りの目も、言葉も、今だけは何も気にならなかった。
『良かった、夜久。私心配したんだよ、あかねちゃんから聞いて、もうどうしたらいいか分かんなくて…』
夜久「うん、ごめんな。」
『練習の時からずっと無茶すんなって言ってたのに、バカ！！！』
夜久「ごめんって、なぁ泣くなよ。俺大丈夫だから」
『泣いてない、これは汗だから！！』
思い切り力の限り抱き締めて、心臓の鼓動が伝わってきて無事だという事実も相まって涙が止まらない。
夜久「汗かぁ、ならしょうがねえな」
『うん』
夜久「狼谷が落ち着くまで待ってるから」
そんな優しい言葉にまた涙が溢れてきて、あぁ、どうしようもなく夜久のことが好きなんだって、そう実感した。
『取り乱してごめん、もう大丈夫だよ』
ミーティングは参加させてもらって、コーチや監督から私にまで労いの言葉をかけてもらった。
『荷物全部持つから、一緒に帰ろ』
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作者名：HAL | 作成日時：2024年3月16日 2時
