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『うーん、第2セット取られちゃったねえ』
第2セットは本当に色んなアクシデントがあった。予想外の、音駒には痛いアクシデント。
負けが後ろまで迫っている緊張感、苦手だ。
「ガッとやっちゃいましょうガッと！俺が20点取ったりますよ！！」
『へ』
灰羽「あとの5点は皆さんでどーぞ！！」
くぐもった思考を明るく切り裂いたのは、リエーフの脳天気な言葉だった。その暢気な性格に何度も傷付けられ助けられたか……
『バカ出てるよ』
灰羽「えっ！！」
黒尾「なあ知ってる？」
リエーフや虎、それぞれに合った声掛けをしていく黒尾は、やっぱり凄いやつなんだなとか思ったり。
黒尾「あの、俺の顔なんか付いてる……？」
『いや、黒尾って実は凄い奴なのかなって思って』
黒尾「狼谷も研磨も、今日切れ味鋭くない？」
これは研磨が先ほど「クロがただのパリピ風野郎なら一緒にやってない」などと吐き捨てたことにある。
孤爪「確かにおれはできるなら汗かきたくないし、練習よりゲームやりたいときもあるし、バレーはやるより見る方が好きかなって思う。
でも、さてとやらなくちゃ。って思うのは、悪くないよ」
『ふふ』
黒尾「ったく、どいつもこいつも……自由かよ」
間もなく第3セット開始の笛が鳴る。
特に誰から言うこともなくコーチ、監督も含めて円陣を組んだ。これが、最後になるかもしれない
黒尾「しんどい時間は越えてきた。」
「ごほうびタイムだ！！」
タオルやドリンクを投げあげ、喜ぶみんなを見守る。
黒尾、夜久、海にとっては3年間の集大成。勝っても負けてもどっちかの3年生は引退。
2セットだったとはいえあんな研ぎ澄まされたプレーばかりで、肉体的にも精神的にも疲労は蓄積しているはずだ。
それなのに、全然引かない強烈なサーブ、レシーブ、繋いだあとのことを考えた動き。
『(なんか、泣きそう…)』
まだ5-5で序盤もいいところなのに、試合の勢いはデュースになって30点に乗るかどうかなんて勘違いしてしまいそうになるぐらい。
高まっていく集中、黒尾のサーブから始まる次の攻撃はアイツの言葉で言うところのヘヴィな1点になるだろう。
体勢を崩しながら澤村くんが拾い、それをなんとか旭くんに繋いだ。リエーフの高い壁がそびえ立ち、綺麗なチームワークからスパイクは黒尾の元へと振り下ろされる。
「ハッハァーッ！！！」
すごい、カッコイイ、あぁ、凄く楽しそうだ。リベロ不在の中綺麗にスパイクをあげて見せた黒尾。
だけれど、こんなに怖いから、怖いときこそ思考の猶予を与えない最短、真ん中、高さ勝負。
『これ、でも……点が入らない』
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作者名：HAL | 作成日時：2024年3月16日 2時
