103 ページ3
『危なかったね、大丈夫？』
夜久「や、多分バレてる」
『マジ……ぁ、本当だ』
私の携帯が鳴ってメッセージの相手を見てみれば赤葦くんと雪絵の2人。
赤葦くんからは『女装した夜久さんですよね、木葉さん本気のナンパしてたらしいです』というメッセージで、雪絵からは『夜久くんのつけてるピンAのだよね？』という写真付きのメッセージだった。
『雪絵に至っては夜久と分かりきった内容』
夜久「もう教室戻ろ、そろそろ黒尾と変わってもいいだろ」
その意見もごもっともって感じだ。綿菓子を食べながら3年のフロアまで戻ると、今度は海に捕まった。
海「ウチのお化け屋敷楽しんでってよ、あとでそっちにも行くからさ」
『えぇ』
海「夜久も」
夜久「う、うるさい」
『暴言控えめ、偉いじゃん』
夜久「……」ﾌｲ
あ、また不機嫌モードに戻ってしまった。
『さっき梟谷の木葉くんにナンパされてからずっとこうなの。今入っていいなら入ろうかな』
夜久「ぇ」
『怖いなら掴まってていいけど？』
夜久「……うぅ」
『ていうか、この格好なら掴まってたほうが自然じゃない？』
ちゃんと海に聞こえないように配慮してお化け屋敷の中へと足を踏み入れた。教室の中は外の賑わいが感じられないぐらいに真っ暗で、涼しかった。いや、むしろ寒いぐらいかも。
『怖くない？』
夜久「まだ、大丈夫」
雰囲気づくりがとても上手で、不安定な足元とか突然つく明かりとか突如割れる風船の音とか、聞こえるか聞こえないかぐらいのボリュームで流れるおどろおどろしいBGMがこれまたいい塩梅なのだ。
『あ、なんかここ前に行ったお化け屋敷に似てる気がする』
夜久「え、それってまさか迷った方……？」
『うん』
夜久「早く出ようぜ、不吉不吉」
『うん、そうだね』
途中途中脅かしが怖くて一時停止しながらも、無事最後まで抜けることが出来た。外の明かりが見えたのがこんなに有難いのもまた久々だった。
『てことで、ただいま戻りました』
3-5の教室はかなり賑わっていた。元々音駒高校の文化祭は力を入れているから全体として訪れる来場者の数も多い。
教室全体を使ってお化け屋敷や遊園地をやっているクラスに比べて、自由に出入りできる私たちの展示は意外にも好評なようだ。
『夜久、あれ座ってみて。写真撮ろうよ』
夜久「い、1枚だけな」
玉座の様な見た目をした豪華なイス、夜久はそこに腰掛け足を組み今までで1番堂々としていた。生意気な王女様みたいで可愛いので私は執事になりきろうと思う。
「じゃあ撮るよー！」
カシャ、と時間が経つにつれて一生大事にするであろう写真が1枚、また1枚と増えていった
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 336人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：HAL | 作成日時：2024年3月16日 2時
