32 ページ32
ガチャ、玄関の扉を開く音に続いて夜久の元気な声と海の落ち着いた声が谺した。
『親いないから、そんなに緊張しないでいいよ』
夜久「仕事?」
『出張多いし、あんまり帰ってこないんだよね』
海「黒尾来るまで時間あると思うけど、どこで待ってたらいい?」
『うーん、私の部屋かな。ちょっと待ってて、荷物置いてくる』
玄関に上がるとすぐ横に階段があって、扉を隔てた先はお手洗いとリビングに繋がる道。
私の部屋は玄関の横から階段を上がった2階にある。だから飲み物なんかを用意してる間は玄関先でちょっと待っていて貰った。
『ごめ、ん、ちょっと多い……』
バランスを取りながら真剣にお茶菓子とかを抱えていたら慌てた夜久が持つのを手伝ってくれた。
『おまたせ、そこの1番奥が私の部屋だよ』
海「開けてもいいの?」
『うん。むしろ開けてもらいたい』
こういう時も気遣いを忘れない男、海信行。いいやつ。
私の部屋に入るときにも、2人は何だかぎこちなく「お邪魔します」と呟いた。夜久の声が玄関に上がるときよりハツラツとしていたのは聞き逃さなかった。
夜久「思っていたよりも質素」
『アンタは私の部屋に何を求めていたの……?』
海「もっと可愛らしいのを想像してたんじゃない?ピンクのぬいぐるみとか?」
『モノトーンですみませんね』
帰宅してから10分あまり、2人も部屋に慣れたのかだんだん寛いで話しをし始めた。
私の両親の話から仕事の話になって、そこでも話題に上がったのが、進路の話だ。最悪。
今日は現実逃避の時間だってのに、っていうのも言ってられないか。
『夜久は高校卒業してもバレー続ける?』
夜久「もちろん!」
『海は?』
海「俺は続けないかな、まだあんまりしっかりと考えてはいないけどね」
夜久「そういうお前はどーなんだよ」
『んー、私も海と同じ感じ』
話が一旦区切れて静寂が訪れたときチャットグループの通知が来て、黒尾が近くまで到着したと連絡が入った。
海「それなら俺迎えに行ってくるよ」
『あ、いいの?』
夜久「おう、頼んだ!」
ま、さか。
『(夜久と、2人きり)』
別に嫌なわけじゃないし、さっきもお化け屋敷で2人だったし。
夜久「そういえば、狼谷の部屋ってバレー関係のもの置いてないよな。ボールありそう?」
海が家を出て2人っきりになったとき、夜久がそんなことを聞いてきた。そういえば本題はバレーボールだった
『ボールはクローゼットにしまったはずなんだよね、ちょっと物広げるね』
夜久「おう」
そしてクローゼットから中学までの思い出の欠片を取り出してテーブルに広げた。
510人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆめの(プロフ) - 投稿頻度凄い高くてうれしいです!頑張ってください〜⸜(*´꒳`*)⸝ (2月27日 1時) (レス) @page28 id: 98dd5cf759 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:HAL | 作成日時:2024年2月23日 4時