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陽炎が見えて、記憶はぼんやりと過去に遡っていた。
私が片脚を失ったときも、こんなふうに熱い熱い日だったっけ
『………脚が、ないや』
目が覚めて直ぐに実感した。
ヒーロー活動を諦めるには十分なことが起こったっていうのに私の頭は意外にもクリアだった。
「Aっ！！！！」
ノックも忘れて走ってきたんだろうと容易にわかる様子のお兄ちゃん、丁度いいタイミングで起きれたようだ。安心した。
『お兄ちゃん、おはよ』
「おはようじゃねえよ、お前…あ、脚が……」
『うん、でも命あるよ。』
「けど、脚なきゃ……お前がずっとヒーロー憧れてて、雄英入る為にずっと勉強してて雄英入って楽しそうで、」
『うん』
「それなのに……なぁ、昨日まで何も変なことなかっただろ？！
なんで今日だ？なんでAなんだ？」
『もぉ、なんでお兄ちゃんの方が号泣なんだろうね』
「だってよぉ！！！」
私はお兄ちゃんのことが大好きだけど、お兄ちゃんも私のことをとても大切に思ってくれていたのを痛いほど感じた。
『あのさ、炎司くんは無事？』
「あぁ、無事だよ」
『そっか』
私が目覚めたことで次から次に看護師が病室に流れ込んできて、お兄ちゃんが追い出されるように出ていった代わりに医者が入ってきた。
「脚、分かってる通りもう元には戻らない。」
『はい』
「ただ、一緒にいたインターン生の子かな、炎の個性の彼が傷口を焼いていたお陰で処置はとても迅速に行えた。傷口もきっと綺麗になる。」
『そうですか』
「とりあえず、義足を色々オススメする。
その様子じゃあ、まだヒーローを諦めた訳じゃなさそうだしね」
『ありがとうございます！』
担当の医者は無愛想で冷たくて、普通だったらもっとオドオド言いそうなところを遠慮なしにハッキリ言ってきた。
けど、ヒーローはもう諦めた方が良いと言われるより全然マシだと思った
『炎司くん、じゃなくて、一緒にいた炎の個性の子はいま話せますか？』
「あの子ね、君の容態を聞くなり帰っていったよ」
『え、帰って……？』
「うん、無事だって伝えて、あとは目が覚めるのを待つだけだと伝えたんだけど、それなら大丈夫だと帰ったんだ。」
『そう、ですか……』
「まだ記憶がぼんやりとしているかもしれないけれど、インターン生とはいえヴィランの関わる事件に関与しているから、近いうちに事情聴取があると思う。それは許可しても良いかな？」
『はい、どうぞ』
ぽっかりと、その日から心には大きな穴が空いてしまった
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作者名：HAL | 作成日時：2023年12月29日 7時
