実らない恋 3

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『稀咲くんたちが埠頭に戻ってきたとき、上手くいった、と言っていた。私はその時修二くんに大きな仕事とは何か聞いた、でも彼が答えてくれることはなくて、それを知ったのはマイキーくんが来てからなの。』

そう、マイキーくんがイザナさんに「どうしてエマを殺した？」と問いかけたから、不思議と辻褄が合ってしまったのだ。

『稀咲くんにエマを殺したのかと聞いたら、彼は首を縦に振った。修二くんもそれに加担したと言っていた。

どうしてそんなことをしたのか分からなくて、私は何度も何度も稀咲くんに聞いた。エマが死んだことも、本当はウソなんでしょ？って、何回も聞き直した。

けど2人は、何回聞いても全部嘘じゃないって言ったの。』

「…………」

『だから今度は、どうしてそんなことをしたのか、聞いた。なんて言ったと思う？

稀咲くんは、マイキーくんを取り込んで日本最大の犯罪組織を作るって、そう言ったの。


私が着いていった稀咲くんはね、そんなの全然関係なくて、好きな人に振り向いて欲しくてどこまでもそれに真っ直ぐで、でも自分に振り向くことは無いって分かってて。私と同じ気持ちをしてる、そんな普通の男の子だったんだよ。』


話をし終わったとき、みんな呆気に取られていた。
けど、稀咲に限ってそんなことは無いと武道や千冬が繰り返し言うのだ。


『みんなはさ、稀咲くんのたったひとつの側面しか知らないんでしょ。けど私はそのみんなが知らない彼の一面を知ってるの。

確かに稀咲くんがエマのこと殺したって言った時は、どうしようもなく絶望したし、何でか全然分からない疑問ばっかだった。

だから、私は稀咲くんのこと思いっきり1回パンチした、喧嘩の場だったから。
そんなんで許されることじゃないのは、分かってる。
わたしだって、まだ呑み込めてないし、エマのことを消化できてないのはみんな同じでしょ？

でも、稀咲くんにもきっと辛い思いとか悲しい気持ちとかは絶対あったハズで、それを知らない人達がただ文句ばっかり言うのは、嫌。』

知らないでしょ。

稀咲くんってね、日向の話を聞する時は表情が和らぐんだよ。照れ隠しにメガネを直すフリをして、顔を隠すの。


花垣「でもッ、稀咲は絶対に生きてちゃいけない奴なんだよ」

『……なにそれ。』

花垣「聞いてくれよ、Aっ、稀咲はずっと」

武道が何かを言いかけたとき、ハッとした顔をしてまた言葉を取り消した。



『武道が、そんなこと言うと思わなかった……』


「違うんだよ、A。相棒はっ」

『ごめん、もう帰ってくれる？』

「っ、！」




『稀咲くんも、ちゃんと友達だったんだよ。』

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