70. 言ってくれたから ページ36
沖田君が集中治療室に入ってから数分後、
ミツバはこの世から去って行った。
近藤さんや他の真選組も、
彼女とは昔からの知り合いでもあったから、
凄く悲しんでいた。
人が亡くなっていく姿なんて何度も見た事があるのに…どうしても泣きそうになる気持ちだけは収まってはくれない。
それから暫く私は屋上で待機していたが、
そこには先客がいた。
「辛れぇよ……こんちきしょ…ッ!」
そう叫びながら彼女の好物だった煎餅を頬張っている土方さん。それも何かを読みながら…。
(……ミツバ、土方さんにちゃんと伝わったよ。)
その文にミツバがなんて書いたのかは知らない。けどきっとそれは、彼女が彼に最期に送った気持ちなのは確かだ。
顔も合わせるの何か気不味いので、
土方さんの視覚に入らない場所で居座る事にした。
「……ここに居たんだな。A。食うか?」
『……なんで銀時はいつもこんな時に限って、私を見つけるかな。』
「こんな時だからこそ、お前を見つけに来たんだろうが…。」
銀時は煎餅の袋から一枚取り出し、お構いなしにそれを私の口に差し込む。
普段の私ならその場で銀時に斬りかかっていたのに。
『…私が辛いもの嫌いってわかってるでしょ…?』
「分かってるから食わせたんだよ。」
ミツバが辛いもの好きって聞いていたけど、
この辛さは半端じゃない程。
寧ろデスソース入りの煎餅なんて人に食わせて良いものではない。
『………っ、なんて物を食べさせるんですか…!?』
言わん凝っちゃっない…。
目から溢れ出したこの雫達が止まらない。
どうしてくれるのよ…。
『…辛いよ……銀時…。』
「あぁ…辛ぇな。こりゃあ、涙も出るわな。」
『……辛すぎて……涙が溢れて来たじゃない…。
馬鹿天パ。』
「そうかい、だったらもう一枚食べろ。」
彼に渡された煎餅を口に含みながら、
気を惑わせるも、目から溢れ出した涙は止まらない。
(…ミツバ…、今日だけで良いから……泣いても良いかな…。)
「………我慢するな、馬鹿A。」
優しく頭を撫でる銀時の手に、
私は心が落ち着くまで涙を零し続けた。
この日味わったデスソース入り煎餅の
あの半端ない辛さの味を、
それを好んで食べていた
笑顔が絶えなかった一人の女性の事も、
私はずっと、忘れる事はないだろう。
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綾葉メグ(プロフ) - ミイラさん» 読んでくれありがとうございます!そう言ってもらえて書いて良かったなと思います! (2020年4月1日 1時) (レス) id: 937ad8ad2e (このIDを非表示/違反報告)
ミイラ(プロフ) - とっっても面白いです! (2020年3月28日 2時) (レス) id: 8b1d0909e8 (このIDを非表示/違反報告)
綾葉メグ(プロフ) - 読んで下さりありがとうございます!そう言ってくれると心の励みなります! (2019年12月12日 23時) (レス) id: 2cd78e4a1d (このIDを非表示/違反報告)
梨央(プロフ) - とても面白いです!これからも頑張ってください!! (2019年12月12日 22時) (レス) id: 5659f84446 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:綾葉メグ | 作成日時:2019年11月25日 18時