【銀魂】紅華の女医

10. 腐れ縁で ページ11

『……銀時……私は……』



「………ケッ。ほらよ。」



銀時は私の顔にめがけて何かを投げつけた。




「そんな昔の事なんざ覚えてねぇや。喧嘩？俺が憎い？そんなに憎いなら憎めばいい。
それなりの事をしてきたんだ。」



『……なんでこれを…。』



「湿気た謝罪なんていらねぇよ。気にしてねぇし。それに悪いって思うならまた長い髪伸ばしてこれを付けろ。先生と俺達の贈り物だろうが。もう無くすなよ。」




投げてきたのは昔誕生日プレゼントに貰った青い髪紐。


戦争の時に髪を切ってそれ以来、髪を伸ばしていなかった。


無くしたかと思ったのに、
銀時が持っていてくれてたんだ。



その紐を受け取り首に巻く。



「っ…！お…おい、早まるなA！無くすなって言ったけどよ、何もそれを使って首に巻けなんて……」




『良いのこれで。今の約束を首輪の様につけておきたい……。忘れない様に。まだ髪も短いし。』




これは、絶対になくしたくないから。
皆を繋いだ縁、私達と先生を繋ぐ形見だから。




「……そうか。」


……、

話は弾み、かぶき町の事やたまに辰馬の事とか話した。



『辰馬か。あの人船酔い治ってると良いんだけど。』



「あいつは変わらずバリバリ吐いてんぞ」



皆、大人びいてんのにやる事が変わらない。
するともう一人の顔が脳裏で横切る。


多分他の二人もそうだろう。



「…銀時、噂では最近江戸で見かけるとの情報だ。」




「厄介な野郎だぜ…。同じ京にいたから分かるよなA。あいつはもう…。」




『えぇ、噂は耳にしていたわ。彼とは一度も会ってない。10年で随分変わるものなのね。街も人も。』



彼も彼なりに世界を変えたいと思っている。私達は私達なりに世界を変えたい。



やり方は違うけど、同じ事を求めてる。




『今は道が違っていても、必ず何処かで会うことになるんでしょうね。』


「あぁ、切っても切れぬからな。あいつとの縁は。」


「腐った縁しかねぇよ。会うことになれば、片っ端から切るだけさ。」



かつての友を正す為なら…。


『……ここでお開きにしましょう。明日は真選組屯所から呼び出しがあるので。』


「……何？真選組だと…！？お前、幕府に方を付いたのか…！？」


「…あぁ、手当の様子だろ。医者だし。気をつけろよ。」



ずっと前から解いてしまった糸が、
またこうして時と共に絡まり始めた。



「…、ククッ、今日もでけぇ月だなァ。」



あと一つの糸を残して。

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