【銀魂】紅華の女医

30. 策士で ページ38

船には呆気なく潜入出来て、
逆に不安が込み上げる。




「姉御、あれ見てみるネ。人がいるアルヨ。」





船の先端にたたずむ一人の影。
大きな満月に照らされるその影は妖艶さを増している。


私と神楽ちゃんはその人に向けて刀と番傘を向ける。






『私の仲間がお宅の船に乗ってるみたいですけど、知りませんか？』



「おい、お前。この船の船員アルカ？」





けどその人は怯まず、煙管の煙を吸っては吐いた。





「今日はまた随分とでけぇ月が出てるなァ。
かぐや姫でも降りてきそうかと思いきや、とんだじゃじゃ馬姫二人、降りてきたもんだ。」




『……っ…！し、…晋助…！？』




何でこの人がこんな所に…？！





……、グィッ…！！







『……っ……！神楽ちゃん…！！』




いきなり降ってきた弾丸を交わし後ろへと行く神楽ちゃん。





「何者ッスか！晋助様には触れさせないッス！！」




次々と船員が出て来てしまい、神楽ちゃん一人で相手に。






彼に手を引かれ、彼に抱き寄せられた状態に。





「おいおい…。久しぶりに会ったと言うのに、刀で挨拶たァ、随分物騒になったじゃねぇか。A。」



『…晋助…。貴方も随分見ないうちにグレたわね。煙管なんて吸い始めて…早死したいの？』






彼の首元に刀を突き付ける。
彼は相変わらず怯む事は無い。





『……っ…！！』





「刀を首元に突き付けるってのはこうやると教えた筈だよなァ…。


それとも何か？どっかの誰かさんと同様、過去の事なんざすっかり忘れて過ごしてるのか？ 江戸一番のお医者様よォ。」






私に刀で首元を突き付ける晋助。
そこには薄っすら血が流れる。



まるで蛇に捕らえられた獲物。
そのお陰で目の前で戦ってる神楽ちゃんに加勢する事が出来ない。






「どう言う目的でここに乗り込んだか知らねぇが、どうやら探してるもんはここにはねェ。つまりお前ら二人、とんだ袋のネズミってわけだァ。」


『…、離して、晋助。今回の件、何か知ってるのでしょう？知らばくれないで。』






こんな事してる暇は無いのに……！




……バァーン！！





『神楽ちゃん…！！』





「……っ…！！…ヅラ…！どこアルカ…！！」





左肩を撃たれた神楽ちゃん。いくら彼女の再生能力が早いとはいえ、このままじゃ…。




『……うっ…！！』



「てめぇの話は後でじっくり聞いてやらァ…。
今は寝てろ。」



首元を手刀で打たれ、意識が暗闇へと遠のいた。

31. どんなピンチでも→←29. 見かけに寄らず

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す