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動かない拷問官 堀川幸月 ページ31

じゃき、じゃきという裁ち鋏が動く音が、冷たい地下室の狭い一室に響く。
部屋には酸化した血がこびり付いた無数の器具が礼儀正しく並び、部屋の中央にある無骨な木の椅子に縛られて座っている、目隠しをされた男が震えていた。彼の前には軍服姿の女が裁ち鋏を持って立っている。

裁ち鋏を持つ女は薄ら笑いをその整った顔に浮かべ、また、わざとらしく鋏を鳴らした。

じょきり。

いやに重たく、音が響く。
その音を聞いた男は助けを乞う叫び声を上げた。

「嫌だ!!!やめてくれ!情報はなんでも吐く!!!!」
「本当に?」
「ああ、本当だ!だから、目隠しを…縄を解いてくれ!」
「嫌ですよ。私か弱い女性ですよ?それも攻撃手段を持たない。そのままで話してください。」

いやお前鋏持ってるだろ。
男は思わずそう思ったが、自分の命が惜しいのか、言わない。正しい判断である。もし言っていたら、小指が飛んでいただろう。
その間も、女はまだですかー?と、じょきじょきと楽しげに鋏を鳴らしている。そろそろカウントダウンを始めそうな雰囲気だ。
それを感じ取ったらしい男はガタガタと震えながらこくこくと頷き、恐る恐るといった様子で唇を開いた。


「俺が知り得る西共和国の情報は___」



裁ち鋏を持つ女、軍務省法務局独立大隊ルーヴに所属する隊員であり、主に拷問を担当する、堀川幸月はほぅ、と息を吐いた。その手には、まだ新しい血に濡れた大振りのナイフが握られている。
この血の主である男は、最近突っかかってくる敵国、西共和国の兵の一人。この前嫌々戦争に参加した時、それなりに地位が高そうな奴を拉致してきたのだ。気づかれるのではと思うだろうがそこは拷問官クオリティ。割とどうにでもなるのである。あの口が軽い男を思い出し、根性なかったよなあ、と一人呆れる。
そして情報を吐かせるだけ吐かせた男は口封じとしてこの手で始末し、用意された死体運搬用のエレベーターに乗せた。
今は完全にフリータイム。幸月は奥に備え付けられた座り心地の良いソファに腰掛け、微睡んでいる。
先程人を殺したばかりの死臭溢れる部屋でよく微睡めるなと思うが、もう慣れてしまったらしい。光が弱い蛍光灯をぼんやりと眺めながら、物思いに耽った。

動かない拷問官→←宇宙的恐怖



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味噌田楽(プロフ) - 更新しました。 (2021年6月1日 21時) (レス) id: 9f9b8eea81 (このIDを非表示/違反報告)
味噌田楽(プロフ) - 更新します。 (2021年6月1日 21時) (レス) id: 9f9b8eea81 (このIDを非表示/違反報告)
柊 琥珀(プロフ) - 三ツ星優星さん» 了解しました。 (2021年3月14日 0時) (レス) id: 15069fcb1b (このIDを非表示/違反報告)
三ツ星優星(プロフ) - 柊 琥珀さん» メモ欄のお知らせです。追記も少ししたので閲覧お願いします(。・ω・)ゞ (2021年3月14日 0時) (レス) id: b581edf190 (このIDを非表示/違反報告)
柊 琥珀(プロフ) - 三ツ星優星さん» お知らせってどこのお知らせですか? (2021年3月13日 21時) (レス) id: 15069fcb1b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:参加者様一同 x他6人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ikatomo/  
作成日時:2021年1月24日 0時

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