【募集企画】とある最強の独立大隊。＜本編＞ (ページ21)

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戯言を紡ぐ　ヴィッセン&ヴェルトページ21

ヴィッセンは人々が肉片へと変化する現場を珈琲を啜りながら眺めていた。

「嗚呼、獣臭い。これだから駄犬は…」

行き場の無い溜息は只宙を舞う。

「貴方はどうお考えです？ヴェルト」

暇を持て余したヴィッセンがヴェルトにそう問うと彼は双眸を細め口を開いた。

「無様」

相手は長い沈黙の後そう呟いた。

「おや、私からすれば及第点でしたが」
　
ヴィッセンがそう妖しげな笑みを浮かべつつ述べるとヴェルトは声を発す。

「連携が取れていない。個人個人が強ければ何も考えないで良いと言う雑魚の表れだ。統率は重要である故に必要不可欠なのをレオンは知らないのか。只自暴自棄、考え無しに暴れ回る事ならば幼稚園児でも可能。己の力を過信した種族の末路は哀れな物だ。故に力の操作も未完成。『素敵』だとか『綺麗』だとか御託は不必要。時に神が味方していると慈悲を乞う戦略を知らん馬鹿に物事は通せない。馬や鹿の方が幾分と楽だろう。最善手は大陸軍作戦論を用いて進行する事だな。相手を翻弄させ思考を汲み取り、能力を駆使して戦う。戦争とは相応の対価を払って完成する劇薬。結論、『コレ』は無様の手本だな」

つらつらと並べる言葉にヴィッセンは思わず笑みを溢した。

「貴方には『神』の信憑性が皆無な様で」

「貴様は信じているのか」

「空想上の産物ですね」

「当然だ。愚かな人類が行き場の無い欲を吐き出しさも『自身は正しい事をした』と多々笑う為の道具に過ぎない」

もし神が存在するのならば、なんて御託は吐き気がする。
ヴェルトはそう付け足した。

現在ヴィッセンとヴェルトが優雅に珈琲を楽しんでいるのは戦場に出ないと言う表れだと言えよう。
二人は暗殺者だ。
憐れな過去を持つ二人は戦場から多少離れた宿泊所に泊まり硝子越しにソレを眺めている。
戦争に参加する気等微塵も無い。
以前何故かと問われた際に『メリットが無い』と口を揃えた二人は効率主義と類似している。

苦い顔をするヴェルトの頬付近に瑠璃に光を纏う蝶が近寄った。
カップを持つ手とは別手の片方の示指を若干上に指すと、先端に蝶がふわりと乗った。

「綺麗ですね。何の種類です？」

「…ミヤマカラスアゲハ」

「確かミカン科野生種の生えている深山に多々見られる生物でしたね、後翅裏面に白い弓状のラインが特徴的だとか」

こくりとヴェルトが頷くとヴィッセンは満足げに息を鳴らした。

戦場は中盤戦、既に勝敗は見えているとヴェルトは悟った。