白夜叉という者 ページ37
どちみち殺されるのなら戦うしかない。其のことが判ったのか、幹部の死を境に一斉に龍祁目掛け駆け抜けた。
しかし龍祁は臆することなく全てを斬捨てる。いつの間にか舞台役者は二人のみとなった。
「さあ……残ったのはそちのみ」
龍祁は刀の切先を幾メートルか先にいる男に向けた。すると男は被っていた笠を指で上げる。其の時に見えた瞳が薄らと細められた。
「……やはり、白夜叉と言われる者は違いますな」
「ほう、貴様私の異称を知っていたか」
「知らない者はいませんよ」にこりと笑みを浮かべる。「あくる日は鬼と恐れられ、あくる日は夜叉として恐れられる。一度暴れたら誰も勝てず戦場を独り無双。どれだけ最恐に近い能力者であろうと全てたたっ切る。血を吸えば吸うほど美しくなり、そしてついた異称は白夜叉」肩の羽織を落とした。笠を投げ捨てる。
男の腰にあるのは刀。龍祁の蒼い瞳が刀を捉えた。
「……人の子。身なりを見たところ侍と思われる」
「ええ。正解です。刀ではなく、能力が行使される時代に侍、だなんて笑われてしまいますけど」
ざ、と地を踏みしめ前に一歩出る。
「名刀、龍祁宗近に宿りし付喪神。白夜叉――いえ、龍祁さん。貴方に一騎打ちを申し込みたい」
「龍祁ぃ! そっちは終わったかぁ?」其の時遠くから仲間の声が聞こえた。
返事がない龍祁に、同じく戦場を駆け巡っていた柊が駆け寄る。しかし、龍祁たちから発せられる只ならぬ雰囲気に息を呑んだ。
「おーい、優?」柊が戻ってこず、心配して仲間が続々と集った時。
「やあやあ我こそは侍の国日本の住人、一条正宗なり! 白夜叉に一戦申し込みたく参った!」一条が声を荒げる。
傍から見ても、今から一騎打ちが始まるのだと言わなくとも判った。
仲間、そして龍祁の弟子の視線が無数に彼女にささる。しかし、彼女は其れに臆することなどなかった。
「やあやあ我こそは三条宗近より打たれし三条の重宝、龍祁宗近なり! その試合、謹んでお受けしよう!」
龍祁のその言葉に、互いが睨み合うようにして立った。観戦者は生で見る一騎打ちに感情が高ぶり、絶句した。
風がなびく。回転草が走った。
一条は刀の柄と鞘に手を置いた。龍祁はじ、と立つ。構えは愚か、動じぬ龍祁に一条が少しだけ後ずさった。
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味噌田楽(プロフ) - 更新しました。 (2021年6月1日 21時) (レス) id: 9f9b8eea81 (このIDを非表示/違反報告)
味噌田楽(プロフ) - 更新します。 (2021年6月1日 21時) (レス) id: 9f9b8eea81 (このIDを非表示/違反報告)
柊 琥珀(プロフ) - 三ツ星優星さん» 了解しました。 (2021年3月14日 0時) (レス) id: 15069fcb1b (このIDを非表示/違反報告)
三ツ星優星(プロフ) - 柊 琥珀さん» メモ欄のお知らせです。追記も少ししたので閲覧お願いします(。・ω・)ゞ (2021年3月14日 0時) (レス) id: b581edf190 (このIDを非表示/違反報告)
柊 琥珀(プロフ) - 三ツ星優星さん» お知らせってどこのお知らせですか? (2021年3月13日 21時) (レス) id: 15069fcb1b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:参加者様一同 x他6人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ikatomo/
作成日時:2021年1月24日 0時