doux-amer (ページ30)

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『ガヤさん...。』

ん？ってこっちを向いたガヤさんに、

首元をチョンチョンと指差した。

『ここ、ついてますよ？』

「えっ？...えっ？！マジ？！」

ガヤさんの首にはキスマークがついてた。

慌てて隠してるそぶりから、知らなかったんだろーな。

『絆創膏持ってますけど、一応貼っときます？』

「あぁ、助かる、ありがとう。」

道の隅に寄って、キスマークが隠れるように絆創膏を貼ってあげた。

「いい大人がカッコ悪いな。ったくアイツ...。」

『あたし、勝手にこの前のガヤさんの言い方から、

　好きな相手にまったく相手にされてないのかと思ってました。

　好きな相手の人も、ガヤさんのこと...』

「フッ...。」

ガヤさんが一瞬悲しそうな顔で笑って、あたしのことを見た。

「Aちゃんも、大人なんだから、

　なにもそういうことするのが好きあってる者どうしだけがする行為じゃないって知ってるでしょ？

　Aちゃんはしたことないの？好きなヤツ以外と。」

いつもの優しい雰囲気のガヤさんじゃない顔。

『あたしは...っ。』

「ウソ。

　ごめん、言わなくていいから。

　ちょっと意地悪言っただけだから。

　絆創膏ありかとっ、ごめん、先行くね？」

あたしの頭をポンッとして、そのまま先に行ってしまった。

ガヤさんの好きな人は、ガヤさんの気持ちに気づいてて、

それでもそんなことをしてるのかな...。

だとしたら...

ガヤさんが可哀想だよ。

好きだから、ホントは気持ちが重なり合ってしたいはずなのに。

智子...

ガヤさんを早く振り向かせて、

そんな悲しい事から救ってあげてよ。