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「ごめん、遅くなった」
「あーっ、やっと来た、洋平くん」
「本当にごめん！」
約束していた時間はとっくに過ぎていて
予定よりも30分遅れで指定された店に入ると
待ちくたびれたなんて笑って迎えられた。
「洋平くん、遅刻って事で今日は一杯以上で笑」
「それは勘弁して、本当にごめんって」
「あぁー、それそれ、
洋平くんのその必死な顔、本当好きだわ〜」
「いや、みっちゃん、笑い事じゃなくてさ、」
「ん〜？ 遅刻したのは誰でしたっけ〜？」
「、、俺です、ごめんなさい」
「あっはは、洋平くん最高！」
甘いのにどこか嗄れたような渋みのある声で
ケラケラと笑い転げるのはみっちゃん
NICO Touches the Walls、
NICOのボーカルギター 光村 龍哉。
何度か対バンしたりフェスで顔を合わしてるうちに
同じポジションなのもあると思うけど
産みの苦しみやらギターのことやら話が合って
何度か飲む(俺は飲めないけど)うちに
こうして2人で会うことが増えた。
「それより、洋平くんさ、
何でそんな濡れてるわけ？」
みっちゃんはメニューを俺に渡しながら
濡れた上着を脱ぐ俺を見て首を傾げた。
「え？ あ、あぁ、うん、ちょっと、ね」
「ふーーーーん、へぇーーー」
「ふーんって、へぇーって」
「だって、おかしいでしょ？
こんな土砂降りなのに？にわか雨でもないのに？
傘、買わない、なんて、さぁ〜」
したり顔で頬杖をつくみっちゃんは
運ばれて来た俺のお通しを突きながら
「なんだかなぁ」なんて笑った。
「洋平くんの事だから誰かに買った傘
貸しちゃったとか、そんなんでしょ？」
もぐもぐとお通しを食べながら
ビールでそれを押し込んだみっちゃんは
「そうでしょ？」なんて首を傾げた。
本当に、みっちゃんは、、
「、、みっちゃんには隠し事すら通用しないかぁ」
「やっぱり、貸しちゃったんだ！笑」
「あー、もー、そんなに笑うなよ」
「だって笑」
「だってって何だよ」
「ふはっ、もう、だって、
洋平くん、あははっ！笑」
お酒も入ってるのも相まって
ケラケラと笑うみっちゃんは
それを納めるようにまたビールを煽った。
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作者名：八名 | 作成日時：2018年5月23日 19時
