臆病者の逃げ場 ページ22
新人のデビューが発表された。これまでの私はリポストして名前を覚えるだけで、リプなんて送らないし歓迎会にも行かなかった。
でも今回は違う…!
いや歓迎会は行けなかったけど!なんとか新人さんと絡んでみせるんだ!そう思ってXを開いて、早数時間が経過している。
リプ送ってる人達、凄すぎるよ…!
どんなメンタルしてるんだよ…!
私がデビューしたばかりのときは、まだにじさんじも人数少なくて、というか統合したばかりで「皆仲良くしようぜ!」みたいな風潮が強くて、先輩方にはかなり良くしていただいた。だから、そのときされて嬉しかったことを自分も少しでも出来たらって思うのに、指が震えてスワイプができない。
だめだ、とスマホをソファに放り投げた。
葛葉も唯華も年末に向けて忙しそうだというのに、私は一人でこんなちょっとしたことにも挑戦できなくて。自分で自分が嫌になる。
「私、本当に葛葉に相応しいのかな…」
ずっと私には唯華だけだった。唯華は推しで、憧れで、遠くても仕方ない存在。天使のような、掴めない存在。私なんか所詮、声のでかいオタクだ。
でも葛葉は違う。隣に並んで、手を繋いで、対等に生きていく相手だ。「婚約」という言葉の重みが私の首を優しく絞めあげる。
目を閉じて、このまま眠ってしまおうかと思っていると、玄関からガチャガチャと鍵を開ける音がした。
「葛葉?」
パタパタとスリッパを引きずる音がして、葛葉が部屋に駆け込んでくる。
「どうしたの?仕事は?」
葛葉「一瞬抜けてきた!すぐ戻る!」
慌ただしい様子の葛葉に首を傾げる。一体何をしに来たのだろうか。
葛葉「手、出せ」
「手?」
葛葉「時間ないから早く!」
よくわからないまま右手を差し出すと「反対!」と言われ、左手を勢い良く掴まれた。そのまま薬指に、冷たい感触が通っていく。
見ると、シルバーの指輪がはめられていた。
葛葉「っし。ピッタリ」
「えっ、ちょ、これどうしたの?!」
葛葉「休憩時間に見付けて、絶対これだろって思って買った」
指輪には葛葉の瞳のように真っ赤なルビーがついている。とても美しいそれを一目で気に入ってしまい、見入っていると葛葉が包み込むように抱き締めてきた。
葛葉「これで俺のもんだから、逃げんなよ」
身動きが取れないくらいギュウギュウに抱き締められる。
この人は全部お見通しなんだ。
泣きそうな顔を隠すため、葛葉の服にしがみついた。
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よもぎもち(プロフ) - めめさん» ありがとうございます!大変モチベーションになります!!続きも頑張りますね! (2月12日 18時) (レス) id: c260269ddb (このIDを非表示/違反報告)
めめ - めっちゃ好きですこの話!!続き楽しみにしてます!更新頑張ってください! (2月12日 17時) (レス) id: a85ab24ed5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:よもぎもち | 作成日時:2023年11月13日 19時