優等生でいさせて！

自己紹介動画 ページ15

『えと、A、Aです。えっと、えーっと、庶務です』

『僕の箇条書きより酷くない？』

『庶務って何するんですか？』

『えっと、私は、じゃなくて、庶務は、あの、えーっと？』

『…一旦切る？』

『ごめんなさい……っ！』

明那のスマホから私の悲痛な叫びが流れる。先日撮った生徒会の紹介動画は、何故かリテイク前の映像もそのまま使われており、ほぼNG集と化していた。私はというと、こういったものに慣れていないのと、序盤に明那とレオスくんがやらかし過ぎていて完全にこの日の撮影はお蔵入りになるだろうと油断していたことからグダグダになった自己紹介を使われて地獄を見ている。

三枝「これ、高く売れるわ…」

「やめてよ！ってかうちの生徒なら誰でも見られる映像を誰に売るのさ！」

緑仙「黛？」

「本当にやめて！！」

こんな恥ずかしい動画を灰くんに見られたら「家」に帰れなくなる。もう一回グレないとやっていけない。というか灰くんを通してハヤトさんとかムンブロとかに広められたら…というところまで考えて気付いた。灰くんを通さなくても、直接その辺に広められる男がいるじゃないか。

気付くや否や、慌てて不破先輩にLIMEをする。返信はすぐにきた。

『ムンブロのグループトークにもう送った！』

絶望。どうしようかと思案していると、不破先輩から追いLIMEが届く。

『社長も欲しいって言ってたから送ったけどよかった？』

「よくないです」と慌てて返信したが、よく考えたらもう送ってるんだから急いで返信しても意味ないじゃないか。「なんで事後報告なんですか」と送ると『ぷり』という二文字と謎のスタンプだけ帰ってきた。

『もちさんには送ってないから安心してな！』

「剣持さんが欲しがるわけないでしょうが…」

スマホに向かって思わず呟く。とりあえず不破先輩に、せめてこれ以上は広めないように念押しの文章を送っていると、背後から影が差した。振り返ると、叶先輩がスマホを覗き込むように背後に立っていた。

叶「誰と連絡してたの？」

この人は相変わらず、プライバシーをくれない。

「不破先輩が、灰く…じゃなくて、兄やその友人に動画を広めたみたいなので、ちょっとお小言を」

叶「ふぅん、ふわっちと仲いいんだ」

「私が、というより兄がですが…」

謎の棘を感じながら叶先輩と話していると、スマホのバイブが鳴った。唯華ちゃんだ。

『生徒会の動画、剣持が欲しがってるんやけど、あげていい？』

欲しがるんかい。

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