烏よ、再び５ 青葉城西編

青葉の幹 ページ14

岩泉｢──っ！｣



　岩泉が目を輝かせ、及川の方を振り向いた。



　及川の進化したジャンプサーブ。



　ノータッチ、決めやがった……！



　岩泉と及川の二人は言葉を交わすことなく、歩み寄る。



　二人の目には同じような、喜びと挑戦的な光が宿っている。



　──パンッ！ とハイタッチが交わされた。



岩泉｢も一本ナイッサァー！｣



　岩泉がネット際まで戻り、大声で叫ぶ。



　その手は後頭部に回されていない。



　口下手なあいつなりの、相棒への信頼なのだろうか。






　──烏野１９点、青葉城西２３点。



　ツーセッターとして入って来た２番をどうにか引っ込めた後。



及川｢狂犬ちゃん！｣



　及川が執拗なまでに京谷ににばかり上げる。



　それに応えるように京谷の攻撃が決まり始める。



『……使いこなすっていうか、』



　──飼い馴らした感じだよな。



　及川が悔しげに歯を食いしばる向こうに主将を見つめた。



　どことなく楽しげだ。



　京谷も気持ち良く打てて、満更でもない顔をしている。



　また笛が鳴った。



　調子に乗った京谷に、たまらず烏野が二度目のピンサーを投入してきた。



山口｢……｣



　前回ジャンフロだった奴だ。失敗してたけど。



　しかし、今回は明らかに目に灯る気迫が違う。



　これで負ければ３年生は引退。





　──それはこっちも一緒だ。



　負けてやる気は毛頭ない。




　
　トッ、と静かにボールが押し出された。



　デカい。アウトだ。



渡｢アウト！｣



　渡がボールに触れないよう、腕を曲げて叫ぶ。



　──不意にボールが、不安定に揺れた。



　妙にゆったりと、スローモーションのように。



　無慈悲にボールが、コート内に落ちた。



　ブワリとネットの向こう側で歓喜の熱が高まる。



A｢ナイッサー山口！｣



　向こうのエースが満面の笑みを浮かべた。






　──それから、５点連続であいつのサーブに取られた。



　俺はもちろんオーバーで捕まえてやった。



　で、あのジャンフロの奴に根性レシーブされた岩泉は青筋を立てていた。



　あんなもんレシーブでも何でもねぇ。



　ただの体当たりだっつの。



　岩泉のスパイクを直に体に受けようって勇気は凄いけどな。



　──タン、とボールが跳ねる。



　酷く静かに凪いだ目で及川がネットの向こう側を見つめる。



　及川の、サーブのターン。

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