烏よ、備えよ ページ2
『ふー……』
Aはパイプ椅子の背に体を預け、大きく伸びをした。
パイプ椅子がキィ、と小さく鳴る。
「ごめんね、お疲れ様。よかったら飲んでね」
事情聴取を担当した警官が、申し訳なさそうにコーヒーの缶を置いた。
Aはお礼を言うが、それに手をつける様子はない。
苦いものが苦手なAにとっては困りものだ。
──プルルルル。
『おわぁっ!』
静かな部屋に携帯の音が響く。
驚いたAが悲鳴のような声を上げ、それに警官がクスッと笑った。
『すみません……』
Aは恥ずかしそうに断りの言葉を入れ、部屋を出る。
そしてポケットに突っ込んでいた携帯を引っ張り出した。
『──はい、もしもし?』
藤永「もしもし。Aやんな? 藤永や」
『藤永先生?』
電話をかけて来たのはAの主治医、藤永だった。
いつものように酒やけで掠れた声をしている。
藤永「お前、いつ来んのや? 病院閉まってまうで」
『……あ』
藤永が怪訝そうに聞く。
Aは先週、藤永のいる病院に予約を入れていた。
理由はもちろん足の怪我について。
既に完治してはいるが、またいつ壊れてもおかしくない。
その為に通院しているのだった。
──そして、そのことをAはすっかり忘れていた。
藤永「おっ前、忘れとったな!? 今日来れるか? 来れんねやったらお前が来るまで開けといたるから
藤永が物凄い勢いでまくし立てる。
関西弁のせいで少々きつく聞こえるが、ただ単にAを心配しているだけだ。
『あっ、行けます! じゃあよろしくお願いしますね』
藤永「はよ
Aが慌てて返事をすると、藤永はさっさと電話を切った。
『あの、すみません。事情聴取って終わりましたよね? 失礼します!』
「気を付けてねー」
Aはガチャッと荒々しくドアを開け、警官に挨拶をする。
警官はのんびりと手を振り、Aを見送った。
Aは大慌てで警察署から出てタクシーを捕まえる。
そして運転手に急いでもらい、藤永接骨院へと向かった。
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細かいですが、藤永さんの病院は個人経営ですので、時間の融通が利きます。
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紅嵐(プロフ) - 孤爪が狐爪になってますよー。 (2020年5月30日 8時) (レス) id: 1d90d43033 (このIDを非表示/違反報告)
よもぎ(プロフ) - テトさん» 分かりました! 頑張って会話、増やして行きます。更新は暇なときは異常に頻度が高いのでご安心を。 (2019年9月9日 7時) (レス) id: 3bd3258fc4 (このIDを非表示/違反報告)
テト - この作品とっても面白くて好きです。更新楽しみにしてます!武田先生と烏養さんとの会話増やして欲しいです!あと、松川さんと花巻さんと会話してほしいです!菅原さん推しです。 (2019年9月8日 23時) (レス) id: eecfed04fa (このIDを非表示/違反報告)
よもぎ(プロフ) - やった、及川さん推しが居ましたー! 夏葵さん、カミューさん、コメントありがとうございます。 (2019年9月7日 18時) (レス) id: 3bd3258fc4 (このIDを非表示/違反報告)
夏葵 - とても楽しく読ませてもらってます!及川さん推しです! (2019年9月7日 18時) (レス) id: 668af22414 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:よもぎ餅のわらび | 作成日時:2019年8月24日 17時