烏よ、再び【ハイキュー！！】

烏よ、飛べ ページ20

影山｢Aさんっ！ トス打ってもらっていいっすか？｣



　二年生組がようやく泣き止んだ頃。



　影山がAに問い掛けた。



　Aは少し言いづらそうに、目を横に逸らしながら言った。



『……ごめん。治ってからの一発目は、スガに頼むって決めてるんだ。その後でもいい？』



影山｢？ はい｣



　影山はAが怪我をした経緯を知らない為、不思議そうに首を傾げた。



スガ｢Aー、準備出来たぞー。……あ、影山。レシーブ入ってくんない？｣



　菅原の要望に、影山は元気よく返事を返す。



　菅原がボールを投げ、影山がレシーブ。菅原がそれをトス。



　──ゆっくりと、丁寧に。



　スパイカーに気持ち良く打たせることだけを意識して。



菅原｢Aっ！｣



　入って来たAが力を溜め、跳んだ。



　ふわり、という効果音が相応しい、軽やかなジャンプ。



『ふっ！』



　ダァンッ！ と他とは段違いの速さのスパイクが、コーナーぎりぎりに叩き付けられた。



　何となく端でそれを見ていた月島や、ワクワクしながら見ていた日向が目を見開く。



月島｢……何あれ｣



『久々だとやっぱ体重いなー』



　ぐりぐりと肩を回すAの声が、驚愕に彩られた月島の声をかき消す。



菅原｢クロスも打つ？｣



『ん、お願い！』



　再びトスが上げられ、スパイクが放たれる。



　今度は反対のコーナーぎりぎりへ。



　細くて小さな体から放たれる、恐ろしい速さと重さを持ったスパイク。



月島｢──これが烏野のエース、か｣



　月島は感嘆と、少し苦い感情の入り混じった声で呟いた。



　その頭には、かつての兄の姿が映し出されていた。

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