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「確かに今日、この時間にと私に伝えましたよね?」
廃ビルの前で優の厳しい声が、糊付きの良いワイシャツを着こなす補助監督へと向けられる。
「えぇ……あたし、今日じゃなくて昨日って言ったんですけど……」と涙目になる女性社員の手元のiPadには、確かに昨日の時刻が表示されていた。
「優さんがどうしてもって言うからお仕事入れるたのに……」
あぁ、やられた。一級昇格試験のことか。そっちまで潰す気なのか、と思わず声を荒げそうになったが、ぐっと怒りを噛み殺す。
「優さんがいくら待ってもいらっしゃらないので、頑張ってほかの術師さんに取り次いだんですよう?」
「それならそうと、昨日のうちに電話の一つくらい入れてくれたら……」
「責任転換ですかぁ?ひどぉい」
ひどく米神が痛い。
最近はずっとこういうことの繰り返しだ。
確かに聞いたはずの集合時間が違うものだったり、提出しなければならない書類が私の元まで着ていなかったり。
____大方、その理由はつくのだけれど。
「(…………お願いだから、五条の邪魔だけはしないでくれよ…………)」
毎日神経をすり減らしていた。
彼に迷惑をかけることで自分自身が追い込まれるのだとこの補助監督に気づかれたら、それこそ術師でなんていられない。今までの苦労の上に積み上げてきた今の暮らしを奪われるなんてごめんだ。それになんにせよ、五条には関係の無いことだ。私が気に入らないなら、私にだけ悪意を向けてほしい。
「まったく……。なんだか知りませんけど、御三家と結婚するからって仕事に手を抜いてもらっちゃ困りますよ〜?」
大概、女は面倒臭いな。
あぁ、私も女だったか。
「あ、今日の飲み会、顔出しにくくなっちゃいましたね?無理しなくていいんですよ〜?きっと昨日Aさんの尻拭いに来た術師の方もいらっしゃるし。それに、」
____あの五条悟がくるのだから
まったく、今度は後頭部が痛い。
彼女がどこまで知っているのか分からないが、非常にやるせない。
一度伊地知くんに本気で補助監督の変更をたのんでみようか。いや、仕事を増やすのは可哀想だな。なにせ今日もあの男に手を焼いているはずだから。
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作者名:およめさん | 作成日時:2021年5月9日 0時