あなたをさらいに夜がくる ４【文スト】【深夜廻】

夜廻１５２.赤の他人に ページ38

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腕を組んで考え込む首領に、奴は俯くと、何かをボソッと呟いた



「‥‥輪廻」


「え？」


「輪廻って名前がいいです」



首領は顎に手をやり、考える素振りを見せた



「ふむ。悪くない名前だとは思うが‥‥


理由はあるのかね？」



すると、奴はきょとんとした顔をした



「‥‥わかりません」



「分からないけど、どうしてかその名前がいいと思ったんです」


＿＿＿＿
＿＿




輪廻




六道輪廻 輪廻転生



めぐりめぐること




めぐりめぐったら、その先は？



行きつく先は何処でしょう



「この二年間で、彼奴は驚異的な順応力を見せた



何より、マフィアだということを感じさせないほどの物腰が、潜入などにはうってつけ



体の細さ故に敵も油断する


異能力があると判明してからは、前線にも立つようになった



そして」





首領の命で、尾崎幹部の補佐になったのだ





『‥‥‥』



私の知らない、空白の二年間



その二年で、どれほどの闇に染まったのか




気が遠く成るほどの空白




それを経て再開した私達は



「全く知らない赤の他人」になっていた



＿＿＿＿


(きっと、二人とも欲しかったんだね)


＿＿＿＿




二年間この世界で「輪廻」として過ごしてきた蓮を




今になって夜の者が呼んだのは



きっと、この世界に私が来たから



私が来てすぐは、無理だった



私が、ミサンガをつけていたから


ムカデ様が、きっと守ってくれていたから



でも、ミサンガを外し、記憶を無くした私達が出逢った今




もう、障害はなかった





『ねぇ、待ってよ。それじゃあ‥‥‥』




蓮が急にいなくなったのって



『‥‥蓮が、連れて行かれちゃう！』




「‥‥‥は？」



取り乱して叫ぶ私に、二人は疑問の声をもらす




「ちょ、ちょっと落ち着いてA


蓮って、輪廻のことなの？何が何だかさっぱり‥‥」




『落ち着けないよ！』





すると、敦は困った様な顔をした




「どうしよう‥‥取り敢えず、太宰さんに」




そう言って携帯端末を取り出すと




「‥‥え？」




画面を見て、固まった




「‥‥ねぇ、二人とも



今ってさ、夜だよね」



敦の問いの意味が分からない




ミサンガに触れる迄は朝で明るかったが、今は辺り一面を闇が支配している所を見ると、過去の記憶を見ていた間相当な時間が経っていたのだろう






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