あなたをさらいに夜がくる ４【文スト】【深夜廻】

夜廻１４３.舞台は整った ページ28

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あははは、と頭をかく敦



その姿に、私は盛大なため息をつく





その時








「A」


『！』



前方から名前を呼ばれた




パッとそちらを見ると



『龍！？』




真っ黒なロングコートに身を包んだ龍




私を見つけると、つかつかと此方に近づいてくる





何か用事だろう？





‥‥‥あれ？





確か、龍と敦って





「芥川！？」


「なっ！‥‥‥何故貴様が居るのだ！」



「此方の台詞だ！」




両者、即座に臨戦体勢





そうだよね犬猿の仲だったよね！




『ふ、二人ともちょっとこっち！』



睨み合う二人の襟首を無理矢理掴み、路地裏へと引きずる




流石にまずい




龍は指名手配犯だし尚更！





『睨み合わない‥‥龍は、なんの用？』






肩で息をしながら聞くと、龍は敦に向けていた剣呑な瞳を私に移した




「‥‥エリス嬢から使いを頼まれた」






そう言って、何かを摘まんで私に見せる





『これって‥‥‥ミサンガ？』



「Aが初めて拐われて来た時、着替えさせる際、貴様の腕から取った物だ


今まで、衣装課で保管していたのだが、返すのを忘れていた」



「‥‥‥衣装課ってなんだ」




敦の質問に、龍は心底蔑む様な視線を向ける




「そんな事も分からぬのか。愚か者め


‥‥‥衣装課は裏組織や警察組織ならどこにでもある。


潜入に際しての衣装を管理する課だ


民間に注文したり、クリーニングに出したりすれば、どの様な衣装が揃っているか情報が漏れてしまうからな」




「そんなのあるのか‥‥愚か者は余計だ」





『でも、私このミサンガ見覚えがないんだけど‥‥』




龍の手にある二本のミサンガ





青と、紫





二本とも大分長い間つけられていたらしく、よれよれになり






ほつれた部分から、一本の赤い糸が覗いていた





「？ そんな筈はない

腕から直接取ったんだからな」




『そんな事言われても‥‥』





私は、龍の持っているミサンガに手を伸ばす






それが、手に触れた






瞬間









カアッ！







「へ？」


「なっ！？」


『‥‥え』





同時に漏れた、驚きの声





突然漏れだした緋色の光に





私達三人は呑み込まれ





そして、意識を飛ばした







＿＿＿＿＿
＿＿＿





さぁ、舞台は整った




これは、悲しい悲しいある人間のお話




愚かで美しい親愛のお話




輪廻とは






別れてからの、「また今度」を望む事を








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