あなたをさらいに夜がくる ４【文スト】【深夜廻】

夜廻１４２.行方不明 ページ27

一度も彼の声に振り向かず


前だけ向いたまま









「‥‥まって。まってよ‥‥‥」







「おいて、いかないで」











「おねがい‥‥‥」





＿＿＿＿＿
＿＿






「‥‥A、大丈夫？」



『何が？』



「あっ。何でもない」





余りの不機嫌さに僕は大人しく口を閉じる




‥‥こんなに不機嫌なA、見たことない




この前から様子が変だったけど、今日は特に




‥‥‥‥‥







‥‥‥‥大丈夫、なのかな‥‥‥





ただ不機嫌なだけじゃなくて、なんだか顔色が悪いような気がするんだけど







僕がちらちらと様子を伺っていると、唐突に彼女の携帯端末が震えた





『‥‥敦、ちょっとごめん‥‥』





＿＿＿＿＿
＿＿






携帯端末が震えた



表示を見ると、「中也」




‥‥‥今の私は、余り機嫌が良くないから出たくないんだけどな





でも、出なきゃ仕方ない





ピッ





『‥‥もしもし』




「Aか！？」




『中也がかけてきたんだから当たり前‥‥』




とんちんかんな質問に気が抜けていると、中也の声が何時もより切羽詰まっている事に気付いた






‥‥‥‥？




「あァ、悪ィ‥‥ところで、聞てェ事が有るんだが」









「俺の知り合いが消えた。手前、知らねェか」





知り合い？





‥‥‥‥‥‥






ドクン ドクン






何となく、嫌な予感がした





『‥‥ちなみに、その人の名前、って？』








「輪廻って奴だ」







凄まじい目眩に襲われた







行方不明？何それ？








どういうこと。ねぇ、輪廻





『‥‥ごめん。多分、分からないかな‥‥』




「‥‥そうか」




まぁ、彼奴の事を手前が知ってる訳ねェよな



そう、小さく声が聞こえた




『ごめんね』




プツン、と電話を切る






‥‥‥知ってる。知ってるよ中也




輪廻の、ことなら





電話を切ってから一層沈んだ私に、見兼ねた敦が




「‥‥A！ 今日も僕と一緒にどっか行こう！」




『‥‥‥え？』






「ほらほら、行こう行こう！」



私をうずまきの外へとぐいぐい押す敦



ちょっ、私今日バイト‥‥




そう焦りながら夏姉を見ると




‥‥‥(グッ






親指を突き出してウインクしてた




『‥‥‥』




なすがまま外へと押し出される私




「じゃあ、えーと‥‥どこ行こうか」



『考えてなかったの！？』




私は頭を抱えた




敦って、以外と自由っていうか天然っていうか

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