あなたをさらいに夜がくる ４【文スト】【深夜廻】

夜廻１４０.何が？ ページ25

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もういい




全て捨ててしまえばいい



何が悪いの？


幾ら記憶をたどっても、消えてしまったそれは



出逢いを許さない


挨拶すらさせず




それは、やがて全てを奪っていくだろう




＿＿＿この恐怖も孤独も悲しみも



＿＿＿いつか






＿＿＿"忘れてしまうのかな"




＿＿＿＿
＿＿





あぁ。頭がめちゃくちゃだ




私の中の何かが可笑しい？



何かが？何が？



どうして？




あの後、怪訝そうな敦を必死で誤魔化し、私達は帰った




今まで普通にすごしていたのに、気付いた違和感は私の思考をゆっくりと蝕んでいく




今まで通りの筈だ



何時もの私の筈だ





それなのにどうして。頭に何かがつかえる




募った不信感が、不安で不安で仕方ない





「‥‥Aちゃん。それ、ホォークじゃなくてスプーンよ」




『え？‥‥‥あ、すみません』




間違えてスプーンをお客様の所に運ぶ所だった




謝りながら夏姉を見ると、何故か頭を抱えている




「息抜きさせに出掛けさせたつもりなのに、何で更に可笑しくなって帰ってくるのかしら‥‥！？」



『夏姉、どうしたの？』



「あっ、何でもないわ」



『ふーん‥‥』





私は、普通だよ



何にも





‥‥‥可笑しく、ない筈なんだ




＿＿＿＿
＿＿




「‥‥‥おい輪廻。それ、ナイフじゃなくてしゃもじだぞ」




「え？‥‥‥あ」



あ、じゃねェよ。逆にどっからしゃもじ持ッて来たんだよ



輪廻は我に返ったような顔でしゃもじを置く




「手前‥‥最近変だぞ。なんかあッたのか」



「？ そう、ですか？」





首を傾げる奴におれはため息をつく




仕事に別段支障はねェが、最近のこいつは絶対に可笑しい





今までこんな事なかッたんだが‥‥




「まさか‥‥恋煩いかァ？」



「‥‥‥‥‥‥‥‥は？」




「は？」



冗談のつもりで言った言葉に、思いがけず奴は目を見開いた




は？



いやいやいや




「手前‥‥マジかよ」



「え！？ いや、違いますって！」




顔の前で手をふって否定する輪廻




その言葉が本当かは分からねェが、もし本当なら、こいつにも漸く春が来るッて訳か




「おー。そーかそーか‥‥頑張れよ」



「だから違うって言ってるじゃないですか！」




輪廻は叫んだあと、俯いて何か呟いた





「‥‥恋なんて‥‥そんな物じゃなくて、もっと‥‥」




「？ なんか言ったか？」




「‥‥いえ」


奴はパッと顔を上げた

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