あなたをさらいに夜がくる ４【文スト】【深夜廻】

夜廻１３９.『あれ？』 ページ24

『えっ』

「この後、暇ですか」


私の腕をガッチリと掴みながら何故か敬語で質問してくる敦に、私は首をひねった


『え‥‥い、一応暇だけど‥‥』


「じゃあ一緒に甘味処行かない！？」



余りにも真剣な顔をしながら、言い放ったのは甘味処へのお誘い


『ふっ、ふふっ』


思わず吹き出してしまった


「え、な、何で？」


『う、ううん。何でもないの

いいよ。行こうか』



敦はぱあっと顔を輝かせる


「じゃあ、行こう！」



そのまま、私の腕をひいた


＿＿＿
＿





「おいしいっ」

『うん‥‥おいしい』


二人して餡蜜を頬張る


確かに、めっちゃおいしい



あんまり挑戦したことなかったけど、和風スイーツっていうのもいいかも‥‥



そんな事を考えながらモグモグしていると、視線を感じた



こっそり前を見てみると、敦がさっきから此方をちらちらと伺っている




‥‥‥‥‥



『敦』


「なっ、なに！？」




いきなり私に名前を呼ばれた彼は、分かりやすい程肩をビクッとさせた




笑ってしまいながら、私は言った



『そんなに気を使わなくても、私は平気だよ』



敦は目を見開く


まさか、私から言われるとは思わなかったようだ




『あのね、敦』




私の目線は、次第に下へと落ちた



『私、無理しなくてもいいんだよね？』


『無理して笑わなくてもいいんだよね？』


『無理して大丈夫って言わなくてもいいんだよね？』



ふと、私の視界が暗くなった




じんわりとした温もりに、気付く





彼が、私の目を覆っていることに





『あつ、し』


「うん。そうだよ」



『敦は、私の友達？』


「当たり前だよ。馬鹿」


零れた涙が、彼の手のひらを濡らしてしまう


無理しなくても、いいよね


少しの間だけ、顔を背けたって







「‥‥‥？ そういえばさ」



『？ なぁに？』



敦が私の涙を拭いながら手をはなす





「最近、僕夜の買い出しついてってないけど、大丈夫？」




『‥‥‥え？』




「え？ ほら、A、夜が苦手だし」




‥‥‥？



夜が、苦手？



あ、そうだよね。私、夜が怖いもの









‥‥‥あ、れ？




どうして、怖いんだっけ？




確か、闇と、大切な人が‥‥




‥‥あれ、あれ？


.







.




＿＿＿＿大切な人、って？




そんな人、いたっけ？


なんて名前だっけ？

どんな顔だっけ？


私は、誰か失ったんだっけ？




『‥‥私、何で』




.


＿＿＿夜が怖いんだっけ？

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