あなたをさらいに夜がくる ４【文スト】【深夜廻】

夜廻１３７.難儀な奴 ページ21

「‥‥‥‥


やっぱり中原幹部の目は誤魔化せませんね‥‥」



「誤魔化せると思ってたんだッたら、ぶっ飛ばすぞ手前

ポートマフィアの幹部舐めんじゃねェ」





ハァー、と中原は深く長いため息を吐く




「ったく、手前といいあいつといい‥‥」



「‥‥中原幹部。『あいつ』とは？」




「あ？‥‥なんでもねェよ」




そう言うと、輪廻の頭をわしゃわしゃとかき回した




「手前も少しは頼れ

俺の弟分なんだからな

後、姐さんの所にも顔出せ。心配してたぞ」



「‥‥承知しました


その前に、次の任務の下準備をして参ります」




「任務だぁ？

‥‥次の潜入のことか。大分先じゃねェか」



「僕の様な戦闘に不向きな人間は、下準備が全てを決めますから

‥‥失礼します」



首領室を足早に後にする彼




続けて、中原も廊下に出た





「‥‥あいつ。大丈夫なのか‥‥」




「チューヤ！！」




「！」





後ろを振り向くと、廊下を走ってくるエリスの姿





「エリス嬢。どうかなさいましたか」



「これ！」




彼女が差し出した手には、青い花束




「リンネが忘れていったの」




「！ ‥‥12、13、14本‥‥」



(あいつ。真っ昼間からこんなに殺ったのか‥‥)





「‥‥綺麗よね。この花」



「エリス嬢。確かに綺麗ですが、それは余り持っていて良い物では‥‥


俺が処分しておきます」




「駄目よ！！」







エリスは、咄嗟にその花束を体の後ろに隠した


手を伸ばしかけていた中原は目を丸くする



「エリス嬢？」


「これは‥‥これは、リンネに返すの」



うつむきながら話すエリスの声は少し震えていた



「リンネは、いつもこの花を花瓶に活けて、萎れるまでお世話してるの


私、知ってる


そして、毎朝こう言うの


『忘れない。忘れる訳がない』って」




「！」







＿＿＿＿難儀な野郎だな。あいつも




中原は、輪廻が去って行った方の廊下を静かに見詰めた





＿＿＿＿
＿＿






離れない。離れない



楽しそうに笑ってた笑顔が


悩んでしかめっ面してた顔が


‥‥‥自分を見詰める怯えた瞳が



自分一人だけが歩く廊下


ふと、立ち止まる




＿＿＿なんで、あんな馬鹿な事をしたんだろう




一般の子に自分から話しかけるなんて



あの子の笑顔に惹かれたのも事実だし


気兼ねなく隣に居られる存在だったのもほんと



でも、それだけじゃないはずだ








‥‥‥ない、はずだったんだ

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