あなたをさらいに夜がくる ４【文スト】【深夜廻】

夜廻１３０.サプライズ ページ14

『‥‥‥』


「‥‥‥」





二人して沈黙



気まずすぎるにも程がある





「御待たせ致しました

アミューズのサーモンロールでございます」





その沈黙を、ウェイターさんが破った




『(ウェイターさん。ナイスです)』




恐らくこの時、二人が同じ事を思っていただろう





＿＿＿＿
＿＿




『それで、新メニューを考えたんですよ』


「へぇ。そりゃすげェな」





あのウェイターさんのお陰で変な空気も吹き飛び



談笑しながら料理を食べきり、残りはデセールのみとなった




「今度エリス嬢にも作って差し上げたらどうだ？


多分喜ぶぞ」




『そうだね。中也もどう？』



「‥‥頂くぜ」




彼はナプキンで自分の口元を拭いながら顔を上げる





「‥‥？

やけに出て来るのが遅いな」




『そう？』






コースについていたのは、洋梨と白無花果のコンポート(無花果なら龍が喜びそうなので、覚えたら今度作ってみようと思う)







ウェイターを呼ぼうか迷いだす中也に、私は一言




『心配ないよ』



「は？」



『多分、作るのに時間がかかってるから』





怪訝そうな顔をする中也





しかし、その数秒後、それは驚きに変わる





「御待たせ致しました」




「！」




『ありがとうございます』





私の前に置かれたのはコンポート




中也の前に置かれたのは




「‥‥なンだ、これ」





艶々としたチョコレートのケーキ


仄かに、ブランデーの香りがする




「おい、頼んでるヤツと違ェぞ？」




「はい。お連れの方から、本日は中原様のお誕生日と云うことで、デセールの方の変更の要望がございました」




中也が目を見開き此方を見る



ケーキの上には、白いチョコレートのプレートに


「Happy Birthday」



と掛かれていた




『ごめんね中也。今日の事、全部計画なの』




訳が分からないと言うような顔をする彼に、私は種明かしをした




『今日このレストラン、姐さんに薦められたでしょ』



「あぁ‥‥なんで手前が知ッてやがる」




『姐さんが私に言ったから』




数日前、姐さんから連絡が来て、はじめて知った




４月２９日が、中也の誕生日だって




だから、祝ってやってくれないかと頼まれた




勿論速攻で了承した




中也にはお世話に成りっぱなしだったし




何より、彼は私の友達だ




拒否する理由もなかった

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