夜廻72.モノクロの笑顔 ページ44
『‥‥‥有り難くお借りします』
「おー。そーしとけそーしとけ」
私には少し大きい上着を羽織り直す
僅かに爽やかな香りが鼻をくすぐった
香水でもつけているのだろうか
なんともお洒落な事である
「準備は出来たか
‥‥‥行くぞ」
黒い手袋をはめた手が私の手をひいた
___
__
「首領。連れて参りました」
「あぁ、ご苦労様」
昇降機に乗り、しばらく行った所の廊下にその人は立っていた
「やぁ、Aちゃん」
『‥‥‥‥‥』
反射で一歩後退した私を、中原さんがぐいっと前に押しやる
‥‥‥中原さんの鬼!悪魔!
森鴎外さんはクスクスと笑った
「そんなに怯えなくても今日は何もしないよ」
その「今日は」に突っ込んでもいいだろうか
「中也君から聞いているだろうが
何せ緊急事態だ。‥‥着いてきたまえ」
そう言うと森鴎外さんは背を向けて歩き出す
『‥‥‥』
「‥‥大丈夫だから、歩け」
不安になってちらっと中原さんを見上げると、私の心を読んだかのような返答が帰って来た
『‥‥はい』
ここまで来てしまった以上腹をくくるしか無い
私は一歩踏み出した
___
_
着いたのは私が閉じ込められていた部屋だった
コトワリ様が破った扉はもう綺麗に修繕されている
森鴎外さんは、その重厚な扉を引いた
『‥‥‥‥!!?
え、りす?』
私が目にした光景は最悪の物だった
まず目に入ったのは、カーペットに座り込んだエリス
口元は笑みを描き、なにやら喋っているが
可笑しいのはその瞳
青く綺麗な筈の瞳は、光を持たない黒
虚ろ、と言うより塗りつぶされたという形容がぴったりだった
そして
その前には
『‥‥エリスが、二人?』
座り込んだエリスの前にニコニコと笑うエリスが、会話に相槌をうっていた
否、違う
もう一人のエリスは、色を失った様なモノクロ
それでも、まるで本物の様な笑顔を浮かべていた
『こ、れは』
「昨晩エリスちゃんは私の元に帰って来なかっ
たのだよ
不審に思って捜したのだが
‥見つけた時には、もうこの状態だった」
『‥‥彼女に意識はあるのですか』
「‥‥分からないのだよ」
『え?』
予想だにしない返答に困惑している私に、中原さんが言葉を発した
「‥‥俺らは、この部屋には入れねェ」
部屋の中に伸ばした彼の手がバチッと弾かれた
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りんず(プロフ) - ユイさん» ユイ様、コメントありがとうございます!そう言って頂けると嬉しいです! (2018年4月8日 10時) (レス) id: f93fc47876 (このIDを非表示/違反報告)
ユイ - おもしろかったです (2018年4月8日 1時) (レス) id: e31a251f71 (このIDを非表示/違反報告)
りんず(プロフ) - 「名もなき贖罪の銃士の少女」さん» ありがとうございます!(^-^) (2018年4月4日 20時) (レス) id: f93fc47876 (このIDを非表示/違反報告)
「名もなき贖罪の銃士の少女」(プロフ) - 良かったです!これからも頑張って下さい! (2018年4月4日 20時) (レス) id: bb589a0fac (このIDを非表示/違反報告)
りんず(プロフ) - 「名もなき贖罪の銃士の少女」さん» 「名も無き贖罪の銃士の少女」様、イメ画ありがとうございます!とっても嬉しいメッセージまで添えて頂いて、にやけそうになりましたが、自分で足を踏んづけてこらえました((近々載させて頂きます!本当にありがとうございました! (2018年4月4日 20時) (レス) id: f93fc47876 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りんず | 作成日時:2018年3月16日 19時