夜廻５７.砕けた物は ページ29
静かに笑みを浮かべた彼の瞳が、僅かに狂気を孕み、私を捉える
此処で捕まっては全てが水の泡になってしまう
どうしよう。どうしよう
「A！」
混沌と化した思考に、高い声が流れ込んだ
森鴎外さんの後ろから、美しい金髪が覗く
『エリス‥‥！』
すがり付くような視線が私と交わる
その時、私はある事に気がついてしまった
次に込み上げてきたのは怒り
あまりの事に、唇がわなないた
＿＿＿
(いや、なんでもねェ)
＿＿＿＿
『そういう、事だったんですね』
私は、結わえられていた髪に手を伸ばすとゴムをほどいた
髪が宙を舞い、背中に落ちる
髪留めをぽとりと、床に落とした
「A‥‥？」
私はそれを見下ろすと、鋏を持ち上げる
「！ A！？」
大きく、美しく煌めくビジュー
「A！ お願いっ、やめて！！」
私が何をしようとしているのか悟ったのか、
エリスが悲痛な叫びをあげる
私はそれを無視して
＿＿＿＿ヒュッ！
髪飾りめがけて、鋏を落とした
バキッ
金属の音がする
私の足元には、光が砕かれたかのように細やかに輝く破片
その光の中に、小さな小さな機械のような物が
鋏に貫かれていた
『‥‥‥分かっていたんですよね？』
そう言った私の声は、怒りに震えていたと思う
『エリスに贈られた物なら、私が絶対に
身に付けると』
彼は表情を変えない
『分かっていたんですよね？』
私は無惨な姿に変わった髪留めを拾い上げると
きつく握り締めた
『分かっていて、エリスに贈らせるコレに、
発信機なんて仕込んだんですよね？』
少し涙の滲んだ瞳を見開くと、エリスは森鴎外さんを見上げた
彼は分かっていた
全て分かっていた上で、利用したのだ
それが、どうしようもなく許せなかった
心の深い所が震える
目の前の狡猾な男性が、とてつもなく憎い
うち震えながらも、頭ではどうやら理解していたようだ
この人の相手は、心をかき乱せば負けだって
手の中の髪留めを、更に強く握り締める
手のひらにじわじわと広がる痛みが、私に
ほんの少しの正気を呼び戻した
『エリス』
私が声をかけると、泣き濡れた大きな瞳が此方を見た
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 450人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
りんず(プロフ) - ユイさん» ユイ様、コメントありがとうございます！そう言って頂けると嬉しいです！ (2018年4月8日 10時) (
レス) id: f93fc47876 (このIDを非表示/違反報告)
ユイ - おもしろかったです (2018年4月8日 1時) (レス) id: e31a251f71 (このIDを非表示/違反報告)
りんず(プロフ) - ｢名もなき贖罪の銃士の少女｣さん» ありがとうございます！(^-^) (2018年4月4日 20時) (レス) id: f93fc47876 (このIDを非表示/違反報告)
｢名もなき贖罪の銃士の少女｣(プロフ) - 良かったです！これからも頑張って下さい！ (2018年4月4日 20時) (レス) id: bb589a0fac (このIDを非表示/違反報告)
りんず(プロフ) - ｢名もなき贖罪の銃士の少女｣さん» 「名も無き贖罪の銃士の少女」様、イメ画ありがとうございます！とっても嬉しいメッセージまで添えて頂いて、にやけそうになりましたが、自分で足を踏んづけてこらえました((近々載させて頂きます！本当にありがとうございました！ (2018年4月4日 20時) (レス) id: f93fc47876 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：りんず
| 作成日時：2018年3月16日 19時
