あなたをさらいに夜がくる ２【文スト】【深夜廻】

番外編「相談事」 ページ24

『太宰さん‥‥折り入ってご相談があります』




私の目の前には、心底不本意だと言うような顔をしたAちゃん




私は仕事をサボって読んでいた愛読書を下ろすと、まばたきを二回した



＿＿＿
＿＿



「へぇ。今日夏さんの誕生日なんだ」



『はい‥‥夏姉、私が教えなかった時は怒った
癖に、自分は黙ってたんです』



そう言いながら、真剣な顔でショーケースと
睨み合う彼女



なんとも彼女らしい、と私は少し笑った




ショーケースの中に入っているのはたくさんのアクセサリー



その全てにパワーストーンがついている




Aちゃんは、夏さんに誕生石をプレゼントしたいのだと言った




見る限り、彼女の中で夏さんはとても大きな
存在だと分かる




だからこそ、何か記念になるものを、と思ったのだろうけど‥‥




あの顔は面白かったなァ





多分、こういう事を知ってそうな人間が周りに私しか思い浮かばなかったのだろうけど




スッゴク嫌そうな顔だったし




‥‥初対面から嫌われている自覚はある




此方としては仲良くしたいのだけれどなァ





『これがいいかな‥‥いや、こっちも』




こんなに警戒させては、私とて傷つくよ




そう呟いたら、乱歩さんに「自業自得だろ」と言われたので、「乱歩さんこそ」と返しておいた





「ブレスレットなんてどうだい？

このサイズなら、そんなに値は張らないよ」




いつまでも決まりそうにないので、彼女に１つ提案をする




『かわいい‥‥』


「だろう？３月２５日の誕生石ならこれだね」




ピンク色の、透明な石




『この石にも、何か意味が？』


「これはピンクジルコン


愛の癒しを象徴する石


宝石言葉は『苦しみからの救済』だ」





そう言うと、彼女は目を見開く



そして、静かに目を閉じると何かボソッと
呟いた



何て言ったのだろう？


首を傾げていると、彼女はパッと顔を上げた




『これにします』



カバンから財布を探し始める彼女


その首元には、セレスタイトのネックレス



つけてくれているという事に、柄にもなく
口元がゆるむ


乱歩さんでも見えない、正体不明の少女



今は何も知らない


でも


「いつか必ず聞き出してあげる


それまで、逃げてはダメだよ？」



否。逃がさないけどね



＿＿
＿


『今日はありがとうございました』

夕日の暮れ落ちた帰り道


私はそう言って頭を下げた



「構わないさ。仕事もサボれたしね」

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