あなたをさらいに夜がくる ２【文スト】【深夜廻】

色々感謝の番外編「誕生日」 ページ19

江戸川さんは子供のようだ



わがままだし、自分勝手な所もある



でも、とても頭がよくて



無邪気そうなのに、全てを見透かそうとする
鋭さを持った瞳が苦手だった




‥‥今の彼に、その色は無い





単純に、私の事を思ってくれている瞳だった




この人、こんな顔も出来るんだ




なんだか、何時もより大人っぽいかも



くすぐったさと、少しだけほどけた苦手意識を胸に、口をついたのは



『ありがとう、ございます』




お礼の言葉




江戸川さんは、また元の飄々とした顔に戻ると
笑って言った



「まぁ、君の作る甘味はいつもおいしいしね！

その代わり、今度僕と駄菓子屋付き合ってね」




‥‥やっぱりよく分かんないかも


＿＿＿＿
＿＿



「やぁ、Aちゃん」



『』




探偵社を下りると、まさかの太宰さんが待ち伏せていた




「君にちょっと用事があるのだよ

ついてきてくれたまえ」





『私バイトに戻らないと

「君が今日バイトじゃ無いことは把握済み
なのだよ」



逃走失敗



あぁ、うずまきはすぐそこだと言うのに！




思いは届かず、私は太宰さんに二の腕をつかみあげられ、何処かへと向かうのだった



＿＿＿＿
＿＿





夕日が街を橙黄色に染め上げる




太宰さんが足を止めたのは、鶴見川の岸だった



私はあることが思い当たり、ずざッと後退る



『ま、まさか太宰さん。
私に無理心中を謀ろうと‥‥』



「君と心中と言うのも、とても魅力的なのだが
ね、生憎違うのだ」


Aちゃんがお望みなら喜んでするよ！



キラキラとする太宰さんに私は全力で首を横にふる



太宰さんはふてくされた様な表情をすると、
つかつかと私との距離をつめ、私の腕を再び
つかみあげた



ビクッとする私の手に彼は何かをのせた



軽い感触がする



それは、細長い箱だった



しっとりとした感じのする黒色で、金色の
リボンがかけられている



「開けてみたまえ」



そう促されてリボンをほどくと



中から輝くネックレスが現れた




シルバーの繊細なチェーンの先に、透き通った空を閉じ込めた様な耀きの石がついている




「お誕生日おめでとう」


『！？
こ、こんな高そうな物受け取れません！」



私は大いに慌てる




「そんなに値は張ってないよ」



嘘をつけ嘘を！



絶対高いよ。箱からして高そう



「貸してみたまえ。付けてあげるよ」




私の心の叫びも虚しく、太宰さんは箱から
ネックレスを取り出した

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