【文スト】社長と迷いネコ その４【福沢】

誠意と、正義と、深い愛 ページ24

月の明るい、夏の夜だった。

路地裏にひっそりと佇むバーの扉には、「本日貸切」の札が掛けられ。

店内では、今まさにこれから、武装探偵社の暑気払いが開催されようとしていた。

思い思いにテーブルに着く社員たち。
その全員が、同じ方向に首を向けている。

視線の先にあるのは、武装探偵社社長・福沢諭吉の姿。
……半歩後ろに、レイヤを従えた、堂々たる立ち姿。

諭吉は、「すでに知っての者もあろうかと思うが」と前置きをしてから。
語った。




ここにいる自分とレイヤが、互いに惹かれあい、恋仲になったこと。

そのことを皆に報告するまでに時間がかかったのは、ひとえに己の至らなさの招いた結果だということ。

故に、面倒や迷惑を被った者もあろうかと思うので、その点については深く詫びたいということ。

そして、自分とレイヤは職場を同じくしているが、仕事は仕事、これまでと何ら変わりなく遂行することは、誓って当然であること。

むしろ、この街を、そこに生きる人々を守る、という、武装探偵社設立の目的であり、常に掲げてきた活動理念を貫く意志は、今までよりも、より強固になったこと。

それは自分が、愛を知ったからに他ならない、ということ。

また、自分が設立したこの社に、気づけば優秀でかけがえのない多くの社員が集まり、組織を、そして自分を支えてくれたことに関して、日頃から感謝の念は尽きず、この場を借りて、改めて礼を言いたい、ということ。

今後も武装探偵社が、その目的を遂げていくためには、稀代の名探偵を筆頭として、今ここに集まった一人一人の力が必要である、ということ。

自分は社長として、社員を守り、責任を負うことが使命と心得ているので、皆は臆することなく、それぞれの力を遺憾無く発揮するだけで良い、ということ。

なお、今件に関して……、つまり自分とレイヤの関係性について、ほんの些細でも疑念や猜疑が生じた際は、探偵社社長ではなく、福沢諭吉一個人としての自分に、いつでも話を持ちかけて欲しい、ということ。



そして最後に、今日は好きなだけ飲み食いし、日頃の労をねぎらってもらいたい、と挨拶を締めくくり。

深く一礼をした。





それは福沢諭吉という、決して短くはない時間を自らの足で歩んできた男の、魂から生み出された言葉であり。
誠意と、正義と、そして深い愛に溢れた、武装探偵社の歴史に残る名スピーチとなったことを。

ここに、付け加えておく。

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