融合す(2) ページ22
『では、何か別のこと……、孫子でも唱えたらどうだ。敵は誰だ? レイヤか?』
いや、レイヤなものか。
『だな。やはり……、国木田か?』
なぜその名が出るか!?
『見くびるな、私はお前だ。己を知れ』
……国木田が敵なものか。
『どうかな。レイヤを屋上などに呼び出して……。一歩間違えば、どんなことになっていたか』
邪推するでない。
彼奴はそんな男ではない。
私が見込んだ、一番弟子だ。
『見込んだからこそ、レイヤに惹かれているのではないか?』
……やめろ。
『ま、敵対したところで、腕力以外では勝てそうにないな。なにせ、お前より三センチほど、上を行っている』
背の高さは関係なかろう!
『世間一般でも、整っていると言われる部類の面持ちだろうしな。どこぞの誰と違って、泣く子もマフィアも黙らせるようなツラ構えとは、だいぶ違うな』
まだ言うか!
『レイヤのことだ、あどけない笑顔で国木田に言っているのではないか? 背が高い、だの、カッコいい、だの』
お前がどう言おうが……、私は決めている。
国木田独歩には、頭を下げねばならん。
大切なことを、彼奴が……、あの花が気づかせてくれた。
『人のいい奴だ。あんな若造に頭を下げるとはな』
歳は、……関係ない。
『…………そうだな、関係ない。お前とレイヤと、同じだ』
ああ、そうだ。
そうだった。
付き合い始めた頃に、……ふと思ったことがある。
自分が、この歳まで独り身でいたのは、レイヤを愛するためだったのだ、と。
早すぎも、遅すぎもしなかった。
このままで、ありのままで、何も過不足はなかった。
眠りの中でなお、自分に身を寄せるレイヤ。
その存在は、もう例えようもなく、ただ愛おしく、かけがえもない。
レイヤに散々乱された心は、結局いつものように、レイヤに落ち着いて……。
『こんなにも、人を愛することが出来るのだな、お前は』
お前もな。
『……会いに行ってやるか』
そうだな。
付き合えよ、福沢諭吉。
『もちろんだ、福沢諭吉』
忘れた頃に現れる、冷たい眼をした、もう一人の自分と。
今ここに……、愛する女性の元に、融合し。
目を閉じて、たった一人の自分になって。
……会いに行く、レイヤ。
……夢の中で、待っていろ。
身も心も絡めて、眠った。
翌朝。
隣で恋人が起きる気配で、諭吉も目を開ける。
上体を起こし、ううーん、と伸びをして……、
カーテンから漏れる淡い光に包まれる、諭吉の女神が、そこにいた。
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カナコ(プロフ) - はるこいさん» 感想ありがとうございます!作者冥利に尽きます、幸せです!キュンキュン大事ですよね☆一気にお読み頂いた後は、社長の腕の中ですぐに寝て下さい!くれぐれも、寝不足で体調崩したりしないよう、お気をつけ下さいね!今後もよろしくお願いします! (2017年3月29日 14時) (レス) id: 5accc3d174 (このIDを非表示/違反報告)
はるこい - はじめまして!社長との恋愛…凄くキュンキュンですね!!言葉の運びが上手で読んでて全く飽きないので睡眠時間も削って一気読みしちゃいました♪これからも更新楽しみにしています! (2017年3月29日 12時) (レス) id: 531fa6c09a (このIDを非表示/違反報告)
カナコ(プロフ) - りりさん» ありがとうございます!嬉しい!興奮して飛んだり跳ねたり走ったりしちゃいます!イッキ読みでお疲れではないですか?ぜひ優しくソフトにゆっくりと、社長にいたわってもらってくださいね(≧∀≦) 社長愛たっぷりで更新して行くので、これからもよろしくお願いします! (2017年3月26日 16時) (レス) id: 5accc3d174 (このIDを非表示/違反報告)
りり(プロフ) - 今日、1から読みました!占ツク内で数少ない社長の小説なので、楽しみながら読みはじめました!読み始めたら最後、ハマってしまい結局全話読んでしまいました(^^)次の更新を楽しみにしてます! (2017年3月26日 13時) (レス) id: bb6c68ea55 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:カナコ | 作成日時:2017年3月18日 11時