(6) ページ50
「諭吉さん、先週、私を誘ってくれたでしょ? 旅行に」
「……ああ」
「それで、考えたんだけど……、私、旅行に使えるような、ちゃんとしたバッグを持ってなくて。せっかくだから、新しく買おうかな、って……」
「……」
「でも別に、そんな大袈裟な話じゃなくて……。映画見た後で、何気なくお店を覗いたら、いい感じの旅行鞄があって……、『あ、映画のついでに、これ買おうかな』って……」
「……」
「そういう気軽な雰囲気で買えたらな、って……。だから、まずは映画かな、って……」
「……」
「あ、でもホントに、身構えない感じで……。でも、一応、二人の初めての旅行だし……、諭吉さんに誘ってもらって、すごく嬉しかったし……。諭吉さんとの旅行、すごく楽しみで、だから……」
「……」
「って、諭吉さん、聞いてます? さっきから……、ちょいちょい……、キス、しすぎ……!」
「……」
「私が喋ってるのに……、んっ……、途中でキスされると……、あっ……、話が先に進まな……、ひゃんっ! ちょ、耳にキス、ずるい……っ、やっ……、くうぅ……、あぁんっ!」
腕の中で、熱を帯び、震えるレイヤ。
その真っ赤な耳を、キスでたっぷりと可愛がってから。
「ああ、レイヤ。了解した。今日は旅行鞄を買いに行こう。二人の初めての旅行に向けて、な」
「ん……」
「だが、その前に……」
諭吉は、甘い声を漏らすレイヤの唇を、キスで塞いだ。
二人の旅行のために、新しい旅行鞄を購入したいという、レイヤの提案は。
諭吉を、今までに経験したのことない、満ち足りた気分にした。
だから、何度でもキスがしたい。
レイヤのすべてに……、
諭吉の前だけで晒される、素肌のすべてに、キスをせずにはいられない。
映画を見る程度の時間、と心に決めつつも。
レイヤの潤んだ瞳が、自分へと向けられて。
「ゆきちさん……」と、キスの合間に、自分の名前が呼ばれたならば。
この世のすべての時間は、レイヤを愛するためにあるのだと分かる。
そしてまた、自分を赤裸々にしてまでも、レイヤを求めることができるのは……、
この部屋にいるからだ。
レイヤの愛に彩られた、この部屋で、二人きり。
本日、何度目か知れない、キスを交わしながら。
諭吉は、愛に溺れた。
(おしまい)
【作者より】
乱歩さんの話が長くなり、予告した国木田さんの話を載せることが出来ず。申し訳ありません。
あとがきは作者のボードにて。
ありがとうございました。
終わり ログインすれば
この作者の新作が読める(完全無料)
←(5)
67人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
カナコ(プロフ) - 山田琉愛さん» ありがとうございます!お優しいコメント、身に染みます(泣!いつも「この書き方で読者様にちゃんと伝わるかな?」と悩みながら書いてるので、キュンキュンすると言ってもらえて嬉しいです!ゆっくりでも、福沢諭吉の魅力をガッツリ書きます!よろしくお願いします! (2020年4月22日 12時) (レス) id: 596e7dae07 (このIDを非表示/違反報告)
山田琉愛(プロフ) - カナコさん» 更新無理せず頑張ってくださいね!作者様の書く諭吉さんは私の中でとっても理想の諭吉さんです。作者様の作品読むと胸がキュンキュンして、とっても満たされます!夢女子にはたまらないです!!! (2020年4月22日 1時) (レス) id: abb9ea5a9e (このIDを非表示/違反報告)
カナコ(プロフ) - 山田琉愛さん» ぎゃー!コメントありがとうございます!諭吉さんが好きな人に読んでもらえて、作者もすっごい嬉しいです!諭吉さんは恋人には甘々ですねw引き続き楽しんでもらえるよう、甘々気分になれるよう更新していきたいと思います! (2020年4月21日 16時) (レス) id: 596e7dae07 (このIDを非表示/違反報告)
山田琉愛(プロフ) - 武装探偵社の社長がこんなに甘々なの見れてすっごい嬉しいです!!諭吉さん好きなのでこの作品読めて嬉しいです!! (2020年4月21日 15時) (レス) id: abb9ea5a9e (このIDを非表示/違反報告)
カナコ(プロフ) - 空梅雨さん» はわわわ、コメントありがとうございます!作品公開してすぐにコメントいただけて、とても嬉しいです!これからも社長のカッコよさをいっぱい伝えられるよう、更新頑張りますので、よろしくお願いします! (2020年4月20日 8時) (レス) id: 596e7dae07 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:カナコ | 作成日時:2020年4月19日 16時