おうちゆきち【文スト・社長】

いやすゆきち(１) ページ5

諭吉が、その気に満ち溢れていることは、わかった。

「その気」、というのは。
つまり、男女の愛を交わしたい、ということ。

邪魔なものは、全て脱ぎ捨て。
限りなく、素肌を合わせ。
恋人の隅々まで、味わって。
愛を……、熱い愛を、打ち付ける。

そういう、「その気」だ。

けれど……。

夕飯を食べ終えて、風呂に行く間も待ち切れない諭吉が。
レイヤの肩を抱き、耳元で囁く。
「レイヤ……」、と。

ああ、けれど…………。

言わなければならない。

「あ、あの、諭吉さん……」

レイヤは、初めての告白に、勇気を振り絞るような思いで、

「実は……、私、今日、『月の日』で……」

至近距離で覗く、諭吉の瞳は。
レイヤの言葉を理解できずに、「ん？」と問う。

「あの……、女性には、だいたい月に一回、あるものが……」
「……？」

「えっと、だから、つまり、女性特有の、体の現象っていうか……」
「……！」

諭吉が、ハッと気づいたようで。
慌てて、体を離す。

「そ、そうか……。気づかず、すまん……」
「あ、いえ……。でも、だから、今日は、その……、そういうコトは、できなくて……」

その気に満ち溢れていた諭吉を……、
愛を注ぎたくてたまらない諭吉を……、
落胆させたに違いない。

レイヤは、「ごめんね」と、口を開きかけるが。

諭吉が、レイヤの頭を撫でてから。
その着物の袖で、レイヤの身体中を包むよう。
優しく抱きしめた。

「レイヤ……、何か、私に出来ることはあるか？」
「え……？」
「いや、どうも……、私には分からんのでな。何か出来ることがあるのならば……、教えて欲しい」

そう言って。
ためらいながら。

「レイヤを、愛している。何よりも大切な、慈しむべき存在だ。どんな状況であれ、レイヤの側にいたいと思う。どんな形であれ……、レイヤを愛したいのだ」

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