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飄々と真実を言い当て、得意げな乱歩と。
ショックを隠し切れない諭吉。
そんな二人を眺め。
どこか懐かしい気持ちになりながら。
レイヤは、クスッと笑った。
少なくとも、八年と三ヶ月は、訪れなかったのだろう。
高級な茶を淹れるような、『特別な時』は。
「乱歩さん、ありがとうございます」
キスを見られたことも、ダンゴを全部食べられたことも。
また門戸以外から入ってきたことさえも、帳消しだ。
「乱歩さんが教えてくれなかったら……、私と諭吉さん、このお茶飲んでたと思います。乱歩さんのお陰で助かりました。さすが名探偵です!」
「まあね、当然だよ」
「でも……、どうせなら、三十分早くこっちに来て、教えてくれたらよかったのに」
「?」
「諭吉さん、この高級な茶葉をどこにしまったか忘れて……、すっごく探したんですよ?」
諭吉が、『そのことは言うな』という顔を、レイヤに向けたけれど。
乱歩がいるとわかっていて、キスをした仕返しだ。
「ホント、困りましたよ。台所も居間も探して、でも見つからなくて」
「……」
「私が『普通のお茶でいいです』って言っても、『駄目だ、今日は高級な茶を淹れると決めたのだ』って言い張って」
「……」
「三十分以上……、一時間近くは探してたんじゃないかな?」
「……」
「結局、食器棚の一番下の、奥の方に隠れてたんですけど……、そりゃ、置いてあるとこ忘れますよね。八年と三ヶ月も経ってたら、忘れちゃいますよ」
「……」
「乱歩さんくらい記憶力よければ、すぐに見つけられたんですけどね。一時間かけて探したのに、賞味期限が切れてたなんて……、こういうのを、『骨折り損のくたびれ帽子』って言うんですかね」
そこまで聞いて。
乱歩は、もう一度ダンゴの串をピンと立て、叫んだ。
「そうか! 謎は全て解けた!」
「へ? 乱歩さん?」
名探偵が解くようなナゾが、今ここにあるだろうか?
と、レイヤが思ったことを、その表情から読み取った乱歩が、
「そう、謎だよ。君が福沢諭吉しか見えなくて、キスをして欲しいと、ねだっていた謎だ!」
「!!!」
「謎だった! なぜ君が、団子を食べる僕に気づかないまま、しつこくキスを欲しがっていたのか!」
「ひいいいいいっっっ!!! も、やめてくださいっ! そのこと言わないでくださいっ! 別にナゾとかじゃないからああああああ!!!」
ついに悲鳴を上げたレイヤには構わず。
乱歩は意気揚々と、推理を披露した。
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カナコ(プロフ) - 山田琉愛さん» ありがとうございます!お優しいコメント、身に染みます(泣!いつも「この書き方で読者様にちゃんと伝わるかな?」と悩みながら書いてるので、キュンキュンすると言ってもらえて嬉しいです!ゆっくりでも、福沢諭吉の魅力をガッツリ書きます!よろしくお願いします! (2020年4月22日 12時) (レス) id: 596e7dae07 (このIDを非表示/違反報告)
山田琉愛(プロフ) - カナコさん» 更新無理せず頑張ってくださいね!作者様の書く諭吉さんは私の中でとっても理想の諭吉さんです。作者様の作品読むと胸がキュンキュンして、とっても満たされます!夢女子にはたまらないです!!! (2020年4月22日 1時) (レス) id: abb9ea5a9e (このIDを非表示/違反報告)
カナコ(プロフ) - 山田琉愛さん» ぎゃー!コメントありがとうございます!諭吉さんが好きな人に読んでもらえて、作者もすっごい嬉しいです!諭吉さんは恋人には甘々ですねw引き続き楽しんでもらえるよう、甘々気分になれるよう更新していきたいと思います! (2020年4月21日 16時) (レス) id: 596e7dae07 (このIDを非表示/違反報告)
山田琉愛(プロフ) - 武装探偵社の社長がこんなに甘々なの見れてすっごい嬉しいです!!諭吉さん好きなのでこの作品読めて嬉しいです!! (2020年4月21日 15時) (レス) id: abb9ea5a9e (このIDを非表示/違反報告)
カナコ(プロフ) - 空梅雨さん» はわわわ、コメントありがとうございます!作品公開してすぐにコメントいただけて、とても嬉しいです!これからも社長のカッコよさをいっぱい伝えられるよう、更新頑張りますので、よろしくお願いします! (2020年4月20日 8時) (レス) id: 596e7dae07 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:カナコ | 作成日時:2020年4月19日 16時