おうちゆきち【文スト・社長】

(５) ページ16

「レイヤ、私だけを見ろ」

諭吉の笑顔が、レイヤを焦がす。

「私だけを感じろ」

深い瞳が、レイヤを飲み込む。

「どこへも逃がさんぞ」

力強い声が、レイヤを狂わせる。

「レイヤの、身も心も、縛り上げ……、私のものにしてやる。私だけのものにしてやる」

体が熱い。
手首どころか、全身、身動きが取れない。
そして……、目の前の諭吉から、目を逸らすこともできない。

「どうした、レイヤ？ いつもより、感じているようだな」
「！！！」

「手首の自由を奪っただけだというのに……、こんなにも蕩けた顔をして……、こんなにも体を震わせて……、私を求めているのだな？」

違う。

違うのに……。

「違う」と言えなくて。

グルグルと回る頭の中で。
レイヤは、確信する。

やはり、諭吉は寝ぼけてなどいない。

しっかりと目が覚めていて、意識があって……。
その上で、こうしてレイヤを攻め立てるのだ。

手首をネクタイで縛り。
レイヤを、未だかつて経験したことのない、途方もない快楽へと引きずり込むのだ。

「さあ、レイヤ、私が欲しいと言え。レイヤの奥深くまで、私で満たして欲しいと言え」

違う。

……違うのだろうか。

もう、わからない。

ネクタイが食い込む手首のように。
愛に締め付けられる、レイヤの喉は。

諭吉に言われるままに、言葉を発する。

諭吉が欲しい、と。

諭吉で満たして欲しい、と。

身も心も強く縛り上げられ、諭吉のものになりたい、と。



「ああ、そうだ、レイヤ。これはすべて……、レイヤの願望。レイヤ自身の、望んだことだ……」



目を閉じ、意識を失う瞬間。

嬉しそうな諭吉の声だけが、レイヤの脳裏に響いて消えた。

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