社長とネコごはん(７) ページ10
「あ……」
夜の街を歩く、二人。
空から落ちて来た雨の雫に、最初に気がついたのは、レイヤ。
「私、折り畳み傘、持ってますよ」
レイヤが、バッグから出した折り畳み傘を開いて。
それを諭吉が、手に持つ。
小さな傘の中に、二人、身を寄せ合って。
歩く。
夜の街を。
「……腹が減ったな」
美味しい食事を終えたばかりだというのに。
片手で傘を持ち、もう片方の手で、レイヤの腰を引き寄せて。
諭吉が言うのだ。
「レイヤ、腹が減った。レイヤはどうだ？」
「え、私？ ……美味しいお肉、いっぱい頂きましたよ？」
「いや、まだまだだ。むしろ、これからだ。そうだな、レイヤ？」
「んー……。諭吉さんに、そう言われたら……」
レイヤは、寄り添う諭吉に、身を預けるように、
「私、結構食いしん坊だから……。したいかも。……おかわり」
「良し！ それでこそ、私のレイヤだ！」
諭吉の大きな手が。
レイヤの頭をぐしゃぐしゃとかき混ぜる。
そして、
「では、速やかに『右折』だ！」
「え！？」
「右折して、大通りに出たところで、適宜タクシーを拾い、レイヤの家に帰る」
「あ、そういう意味の、『右折』ね。でも、タクシーなら、ちゃんと専用車を呼んだ方がいいんじゃないですか？」
「いらん！」
「他のタクシー使ったって知ったら、運転手さん泣いちゃいますよ？」
「構わん。泣かせておけ」
「酷いなあ、諭吉さん。……それに、私……、別にタクシーじゃなくても、いいですよ？」
「？」
「実は、こーゆーの、ちょっと憧れてて……」
「？？」
「初めてですよね？ 諭吉さんと、相合傘」
「……あいあいがさ？」
「そう。好きな人と一緒に、一つの傘使って、歩くの」
「成る程、そうか……。愛愛傘、か……」
「うん。だから……」
「ああ、そうだな。では、もう少し歩くとするか。愛愛傘で」
「もちろんです！」
嬉しくて。
笑顔を向けたら。
諭吉が、持っている傘を、少し傾けて。
二人の顔を、隠すようにして。
それから、ゆっくりと近づいて。
……優しいキスをくれた。
(おしまい)
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カナコ(プロフ) - ﾗｲさん» ありがとうございます！！！！こんなコメントいただけて、嬉しくて涙出ました。愛読してくれる方に楽しんでもらえるよう、マイペースながらも頑張りたいと思います！ (2019年6月6日 21時) (
レス) id: 596e7dae07 (このIDを非表示/違反報告)
ﾗｲ - 好き！！！！！もう、本当、そーゆーところ大好きです！愛読し続けます (2019年6月5日 13時) (レス) id: c9f19c4ce0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：カナコ | 作成日時：2019年6月5日 11時
