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蕎麦(7) ページ18

レイヤが、あの美味い蕎麦を出す旅館に、行くと言う。
今宵、三人で。

それは……、

「駄目だ、レイヤ。それは……、それだけは……、いかんのだ」
「諭吉さん……」

「あの蕎麦屋はな、そう、おいそれと行くところではないのだ。少なくとも私にとっては……、大切な場所だ。大切な、思い出の場所だ」
「あ……」

「私の思いが、分かるか、レイヤ? あの時……、あの公園で……、己でも把握しかねる衝動に突き動かされ、食事に誘った。弁当の礼だと言うのは、半ばこじつけだ」
「……」

「そして、そういう特別な相手を連れて行くには、どこが良いかと考えて……、あの蕎麦屋しか思いつかなかった。あそこは、そういう場所なのだ」

諭吉の熱い言葉と、力強い視線に。
レイヤは赤く染まる頰を隠すように、うつむいた。

「……レイヤ」

そんなレイヤにかけられる。
諭吉の優しい声。

それは、
「こちらを見ろ」
「私を見ろ」
「私の愛を受け取れ」
という意味の、「……レイヤ」。

だからレイヤは。
ふにゃり、と。
猫のような笑顔を、諭吉に向けて。

「あの、私、何となく、そうなのかなって思ってました。そうだったらいいな、って……」
「?」

「あのおソバ屋さんは、諭吉さんにとって、特別な場所で……。だから、私を連れてってくれたんだ、って。そうだったら、いいなって……」
「レイヤ……」

「図々しいかなって、思ってたけど……」
「いや、レイヤの思う通りだ。……ただ一点の間違いを除いて、な」
「え?」

「あそこは『蕎麦屋』ではなく、『美味い蕎麦を出す旅館』だ」
「!」

互いに顔を見合わせて。
小さく笑い合った。

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カナコ(プロフ) - ライさん» ありがとうございます!!!!こんなコメントいただけて、嬉しくて涙出ました。愛読してくれる方に楽しんでもらえるよう、マイペースながらも頑張りたいと思います! (2019年6月6日 21時) (レス) id: 596e7dae07 (このIDを非表示/違反報告)
ライ - 好き!!!!!もう、本当、そーゆーところ大好きです!愛読し続けます (2019年6月5日 13時) (レス) id: c9f19c4ce0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:カナコ | 作成日時:2019年6月5日 11時

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