【ヒプマイ】感情の果実 (ページ9)

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8粒、ページ9

幻太郎side

目覚めると、少し体の動きずらさを感じた。

手には何も無いはずが重みを感じる。

その正体は薄めの掛け布団。

…こんなもの、取り出した記憶ないのですが？…

左肩に体の重みを掛けていたのを、背中に移す。

そして、どこか違和感を感じ、右をむくと、

目の前に彼女の顔があった。

彼女の寝息が正確に聞こえる距離。

まつげの一本一本が繊細に見える距離。

ゆっくり、彼女を起こさないよう離れる。

『えっと、小生は昨日、彼女がソファに寝たのを

見て、寝た筈なのですが……

1度起きたのでしょうか………？』

そこで、また違和感に気付いた。

彼女の手。

薄く紅く染まっている。

距離などどうでもいい。

彼女に近づく。

かがみ、

手をそっと持ち上げると、歯跡が薄く残って手の

ひらの一部から血が流れた形跡があった。

これは、事情を聞きましょうか……

息をついて、立ち上がる。

洗面台へ向かい眠気を取り払う。

鏡に映る濡れた小生の顔。

じっと見つめる。

そこで、さらなる違和感を覚えた。

私はなぜ彼女にこれほど気遣っているのでしょう…

彼女はただの、

ただの、いつ別れがくるかも分からない、

同居人だというのに………

小生は彼女が好きなのでしょうね……………

まあ、もちろん嘘ですけど。