4粒、 ページ5
バッシャーン
お風呂の湯船に飛び込む。
温かい…。
というか、この湯船、に浸かったのは初めて。
とてもお水がはってあるだけなのに、
ふわふわしている…………
全身を沈める。
口から空気が音をたてて外へ出ていく。
水の中から見えるお風呂の照明が、太陽みたいに
輝くのは、今いる此処が素晴らしいから。
私を助けてくれる、温かい場所。
と、私は信じる。
顔を水から出した。
勢いよく顔をあげたせいで、水が外に飛び散る。
長髪が邪魔して前が見えない。
湯船から出て、脱衣場で服をきる。
置いてあった服は………とってもでかいTシャツ。
すっぽりとおさまる。
脱衣場を出る前に、鏡を眺めた。
映るは、私。
少し頬を火照らせ、真っ白の服に包まれる私。
赤い目の、レモン色の長髪の、私。
自分を知らない。私。
歩み出て、鏡の自分の頬に触れる。
「出たのですね。夕飯が出来ていますよ。」
そんなことをしていると、幻太郎が入ってきた。
『うん。服、ありがとう。』
「いいですよ。誰かさんのですから。」
………?
とにかく、リビングへ向かった。
卓に置かれていたのは、とても健康的な日本食。
湯気が上り、キラキラしている、
『いただきます』
そっと言って、そっと口に運ぶ。
また涙が零れた。
「美味しいですか?」
幻太郎が魚を口に運ぶ途中に問いかける。
もし、この温かさが、この胸がふんわりする感覚
が、この涙が零れることが、美味しい。というも
のならば、きっと………………
『美味しい。』
のだろう。
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作者名:羽憐 | 作成日時:2019年4月17日 20時