2粒、 ページ3
幻太郎side
昨日、夜遅くに見つけた少女と、近くにあったシ
ョルダーバッグを抱え、小生の寝室に運び、着物
の薄いものを着せ、身体の汚れを拭き、寝かして
いたのですが、
なぜか、泣かれているのです。
泣きながら、お粥をかきこんで、ぶわっとまた涙
を浮かべる。
貧しい…のでしょうか……
カタンと音をたて、スプーンとお椀をおき、
目に溜まった涙を着物の袖で拭う。
「ごめんなさい。取り乱してしまって。
私の名前はA。
昨日は事情があって、
助けてくれてありがとう。」
きっちりと挨拶をして、
頭を深々と下げる。
『構いませんよ。
小生は夢野幻太郎です。』
「夢野幻太郎…?」
首を傾げる彼女、
『はい、夢野、幻太郎です。
小説家です。』
「そうなんですか。」
そういって、すっと立ち上がって、布団に崩れ
た。崩れる直前に、支えたからいいものの。
『何しているんですか?
足にかなりの怪我がありました。
無闇に歩かないことをお勧めします。』
彼女を布団に寝かせながら、話す。
すると、少し俯いて、小生の目をしっかりとみ
る。
「………………わかった。
幻太郎。
幻太郎は、
私の事、
少しの間、
匿ってくれる?
事情はちゃんと整理してから、話すから、
ダメ……?」
か細い声が途切れ途切れに紡ぐ。
小生はいいですよ、
とだけ告げ、
彼女は薄い、薄い笑顔を浮かべ、瞼を閉じた。
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作者名:羽憐 | 作成日時:2019年4月17日 20時