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まてんろーとさようなら ページ17

問い詰める三つの視線が私に突き刺さる。

「決して皆と住むのが嫌になったんじゃないの!私は…っ」

MTCの事務所から外に出ちゃいけないから。
そう言おうとしたが、左馬刻に口を手で塞がれた。

何故か分からなくて、私は左馬刻を横目で睨む。
すると、左馬刻は静かな目をしていた。

「…先生、ちょっと席外させてください」

左馬刻はそう言って、私を引っ張り廊下へとつれ出した。

「…っちょっと、なんで「お前、さっき何言おうとした?」…え?」

私が反抗すると、それを遮るように彼は問いかけてきた。

「何って、私は出られな……っあ、」

「…はぁ、テメェ考えてなかったのかよ…そうだ。それを言うっつーことは…分かるよな?」

威圧感のある目で再び問いかけてくる。
そうだ、これを言うと先生達に私が軟禁されてることを言うことになる。
もちろん左馬刻からすれば許されない行為だろう。

…言えば、この生活から助けてもらえる。

そう考えると、言ってしまおうかという気持ちが浮かんだ。
だけど、この数日間の生活を思い返すと、案外楽しいと感じていた自分も居て。

悶々と考えていると、左馬刻は面倒くさそうに頭を掻き、

「…まあ、どうするかはテメェで考えろ。
俺はあえて何も言わねぇよ」

と言った。

…格好いい先輩、何だかんだ優しい左馬刻、天然な理鶯さん。

悪人もいるけど、本当は悪い人じゃないんじゃないか、と最近思う。
だから、私は…

部屋に戻ると、相変わらず三人は浮かない顔をしていた。
椅子に座り、私は口を開いた。

「私、やっぱ仕事場まで毎日通うの大変だし、あっちに住もうと思って!
それで、丁度この人達と知り合ったからさ。ね?」

同意を求めるのを装って、左馬刻の方を見ると、彼は少し驚いた顔で「お、おう」と言った。

それに三人も納得したのか、その後は軽い世間話などをして過ごした。

日も沈みかけ、そろそろ帰ろうと外に出る。

最後まで一二三は抱き付いて離れなかったけど、また会いに来るから、と言って無理矢理さよならをした。
これで良いんだ。私だって後悔はしてない。

帰りの車の中、相変わらず沈黙が続く。
しかし、左馬刻が不意に口を開き、

「…ちょっと、ほっとした。お前が出ていかなくて」

とだけ呟いた。

ちら、と彼の顔を見ると、少し赤く見えて。

ああ、やっぱり言わなくて良かった。

そんなことを考えては、ふふ、と自然に頬が緩んだ。

おまけ(先生視点)&どうでもいいお知らせ→←まてんろーにご挨拶



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くらげ(プロフ) - うわぁあ…すみません、夜中の更新で寝ぼけてました…(言い訳)訂正しておきますね、報告ありがとうございました! (2018年10月12日 23時) (レス) id: 83c8e44be3 (このIDを非表示/違反報告)
千平(プロフ) - 先生視点おまけ4行目、シンジュクの左馬刻じゃなくてヨコハマの、ではないでしょうか? (2018年10月11日 4時) (レス) id: e2b806019f (このIDを非表示/違反報告)
くらげ(プロフ) - 琴葉さん» 確認したところ『佐』になってました…!教えていただきありがとうございます! (2018年9月23日 16時) (レス) id: 83c8e44be3 (このIDを非表示/違反報告)
琴葉 - 左、馬、刻ですよ (2018年9月23日 12時) (レス) id: cc1af6d8b8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:くらげ | 作成日時:2018年9月18日 0時

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