第20話【蔭波軍】 ページ21
「くそ。此奴ら、一体どんくらい居やがる」
上着の袖で頬を拭う江戸訛りの人物、榎本武揚が怒鳴るように言った。
その軍服の左腕には、金色の糸で刺繍された「蔭」の字が黒い生地に映えている。
「約200体って放送で言ってたじゃないですか。聞いてなかったんですか?あ、もしかして耳遠くなりました?」
「ちがわい!こら明らかに200体所じゃねぇぞ。さっき通信で鶴翼の囲だか何だか言ってたが、多分翼の一つもむしれてねぇ」
山田が無表情のまま榎本の言葉に噛み付いたが、昔程には頭に来なくなっていた。
昔程には。
鶴翼の陣やら囲やらの具体的な形はわからないが、名前からして鶴の羽の陣形なのだろう。小松や大久保に聞けば詳細を教えてもらえるのだろうが、今はそれどころではない。
迫り来る五体を、一歩踏み出し刀を大きく薙いで斬り伏せる。
更に左腕を突き出しハンドガンで二発。
だが。
「…何ですか、あれ?」
ふと振り返ると、山田が信じられないという風に、自分を通り越してずっと前の方を見ている。
「…え」
向こうからやってくるあれはなんだ。
形こそ妖なれど、色が違う。
赤だ。
「ちょっとちょっと、あれ何ですか!?」
後ろから徳田が刀を持ったまま駆けてくる。
無論二人の口からは何も出ない。
答えることが、出来ない。
「一体、何がどうなってやがる…」
そう呟いた時、すぐ後ろで砲音が響き渡った。びりびりと空気が揺れ、一瞬鼓膜の安否を疑った。
「今本部から連絡が入った。妖の上位種で普段の妖より数段手強い。触れれば数分でお陀仏だそうだ、気を付けて行くぞ」
榎本のすぐ前に、黒い妖の死体が二体転がった。木村の方には振り返らず、おっかねぇ、と内心呟く。
と、隣の徳田が後ろを振り向いて頷き、再び木村と突撃していった。
視界の隅では、大久保と義弘が寄ってきた妖を一掃しようと、各々の武器を手に戦っている。
「…僕達も行きましょうよ」
「言われなくてもそうするつもりだ」
再び、刀を構えた。
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スピカル@ulog出現率高め。(プロフ) - 更新させていただきます! (2017年7月16日 20時) (レス) id: f5a1a44351 (このIDを非表示/違反報告)
哀の戦騎(プロフ) - 終わりました! (2017年6月27日 16時) (レス) id: 6ae72a29d5 (このIDを非表示/違反報告)
哀の戦騎(プロフ) - 更新します! (2017年6月27日 15時) (レス) id: 6ae72a29d5 (このIDを非表示/違反報告)
みけねこ@お絵描きはまった(プロフ) - 大変遅くなり、申し訳ございません!!終わりました! (2017年6月25日 20時) (レス) id: 78e8420888 (このIDを非表示/違反報告)
みけねこ@お絵描きはまった(プロフ) - 更新します! (2017年6月24日 17時) (レス) id: 78e8420888 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:梨月 x他6人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/novel/nikoakohor10/
作成日時:2017年6月19日 21時