妖破流転【小説】 (ページ3)

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第2話【太安万侶】ページ3

自室の椅子に座り、はっと息を吐く。隣には自然に土方、玉菊が傍にいるのはやはり、彼らの絆＿＿なぞと言うものなのか。実質はそんなに綺麗なもので結ばれていないのだが今は関係無い。稗田に言われた言葉を思い出す。

「200か……どうだろうか。のぉ土方君」

「予想以上か、それほどでもないか。まぁそこをさ迷うだろうな」と土方は珈琲を片手に資料に目を通す。玉菊などは興味ながなさそうな表情で外を見やる。と溜め息を吐く。

「こんなんだったら、薩摩隼人軍でも呼んだ方が良かったかも……」

薩摩隼人軍＿＿全員が戦闘に特化した軍隊である。今は東洋に赴いているが、馬もなく知らせが届くだろう。彼らがいたら妖など切り捨ててくれただろうに。不安そうな玉菊に気がついたのか、太安万侶は優しい手つきで彼女の頭を撫でた。

「大丈夫だ、彼らがいなくても。直ぐに翔んでくるだろう」

太安万侶の言葉とその体温で不安そうな表情はかきけされる。だがやはり、土方は不安そうだ。

(こうなったら、俺らも出るしなあるめぇか……)

と腰に指す打刀と脇差しに手をやる。鍔の冷たい感触が手を伝い、体を伝う。表情は相変わらず険しい。自分も玉菊も社長も戦える。だが彼らの能力には“副作用”等という厄介なものがある。妖に殺られるよりそちらの方が痛く辛い。だが＿＿。

太安万侶は村な土方を見抜いたかのように鍔を触る手に、手を重ねる。土方は驚いて見やるが、狐の面で顔は見えない。だがその手からは暖かい体温があった。

「大丈夫だ、儂らが出る事などない。忘れるな、ここには誉れ高き討伐軍がいることを……」

「全軍、妖を倒せ。それ以外に、儂は臨まぬ」

「行け、倒せ、救え。妖を全てを亡くすかの如く」