人間洗浄機３

日常121　偽善者 ページ48

「入間さん、どうしてここに？」

「彼が教えてくれたんですよ。」

そう言って銃兎は儀晴を少女たちの前に出した。
少女と絢子は目を見開いた。
まさか儀晴が助けてくれたなんて思わなかったのだ。

先ほど、第三音響の男達から外れた一人の男が儀晴だったのだ。
＿突入なら今です！
その合図を聞いて銃兎が突入合図を出したというわけだ。

少女は何故銃兎と儀晴が協力しているのか、二人には知る権利があるという事でその経緯をすべて聞いた。
二人は儀晴の前に立つ。

「首、痛かった。」

「悪い。」

「怖かった。」

「悪かった。」

「という事で、こっち向け。」

＿バチン
軽快な音が響いた。
少女が儀晴にビンタしたのだ。

「刑務所から出てきたらケーキバイキング。私とジュンちゃんに。」

「お！良いね。儀晴の奢り？」

「当然。」

「お…俺は酷いことをしたんだぞ？」

「「まぁ、許してはないけどね。」」

「はい。」

少女と絢子はジト目で言った。

「Aのビンタは痛いでしょ？」

「正直くそ痛い。」

「反省もしてるでしょ？」

「あぁ。」

「ならさ、許してはないけど、うちら友達で良いじゃん。」

絢子が言う。少女もそれに頷く。
儀晴は涙を流し、連行されていった。

その光景を見て、二人は何故儀晴を突き放さないのか、銃兎は疑問に思った。
＿まるで偽善者だ。
心の奥では怒っているのではないのか。
そう感じた。

絢子と少女は被害者という事で、婦警さんに軽いカウンセリングを受け、21時にようやく解放された。
絢子は迎えが来ており、その車で帰るらしい。
少女も送ろうかと提案したが、少女は銃兎と話したいことがあったため断った。



「入間さん、お時間良いですか？」

少女は銃兎の元へ歩く。

＿あぁ、今日で少女と話せるのは最後かもしれない。
銃兎はついにこの時が来たと銃兎は身構えた。

助けられたはずなのに、少女たちを危険にさらしてしまったのだ。
当然の報いだろう。
銃兎は意を決して少女の方へと振り向いた。

「えぇ、勿論です。」

「じゃあ、場所変えます？」

「…私の家でどうです？」

「そうしましょうか。」

銃兎は東京署の警察に現場を引き継ぎ、少女の元へと戻ってくる。
銃兎に案内され、車に乗り込みイケブクロの街からヨコハマへと向かう。

車内で一郎に連絡を入れ、窓を眺める少女。

車の中では音楽がただ流れるだけで会話はなかった。

少し重たい空気を乗せた車がヨコハマの街を走る。
銃兎の家まではもう少しだ。

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